0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『リディック・ギャラクシー・バトル』




デヴィッド・トゥーヒー『リディック・ギャラクシー・バトル』再見、

リディック=ヴィン・ディーゼルは、ネクロモンガー族の最高位に就いたが、司令官のカール・アーバンの策略により、知らない惑星に置き去りにされる。

その惑星は灼熱の大地が広がる上に、凶暴な水棲エイリアンやモンスターが襲いかかってくる最悪の星だった。

エイリアンとの戦いに苦戦しつつ、リディックはなんとかこの星から脱出しようと、シェルターで見つけた非常用無線を発信して、指名手配されている自分を捕まえるためにこの惑星にやって来る賞金稼ぎたちの宇宙船を奪おうと計画する。

賞金稼ぎ軍団とリディックの対決が始まるが。




ヴィン・ディーゼル主演のリディック・シリーズ3作目。

戦闘能力高いリディックが、冒頭凶暴なモンスターやエイリアンに苦戦し、随分追い詰められるが、この場面は台詞がなく、言語無き原始的な空間でリディックにモンスターやエイリアンが襲いかかるばかりのシーンが描かれるが、原始的なワイルド空間にサイレント映画的な原始性が重なり、中々映画としての魅惑が煌めく冒頭描写になっており秀逸である。

こんな描写が全編続けば中々得難い傑作になったようにも思うのだが、しかし賞金稼ぎたちとの戦いが始まると徐々にありがちなSFアクション映画のパターンやテンプレにハマりだし、挙句ラストは妙に腰砕けで取って付けた中途半端な終わり方となりちょっと残念である。

リディックの過去の話も絡むが、それが物語に深みを与えているともあまり言い難い。

やはりリディック以外の人間が出てきてからの描写がイマイチ失速気味で、冒頭のリディック以外はエイリアンやモンスターだけの場面のサイレント映画的描写の緊迫感が薄れたのが惜しい。

別にヴィン・ディーゼルはリディック役に似合っているし、エイリアンやモンスターにも生々しい迫力があるのだが、冒頭の描写がいいだけに、後半の人間同士の疑心暗鬼を描いた部分のサスペンスがイマイチとなり、全体に尻つぼみ感というか失速感を感じざるを得ない映画になってしまったのが残念である。

それでもそうつまらない映画というわけではなく、不穏な気配の惑星で展開が二転三転するSFサスペンスアクション映画にはなっている、まあまあな出来の一篇。 2017/09/30(土) 00:06:21 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『虎狼の大義2』




浅生マサヒロ『虎狼の大義2』再見、

武闘派ヤクザの竹内力は、本来は敵対している捜査四課特別対策班の刑事・今井雅之と手を組むことになるが、それが災いしてか竹内の仲間が死に、竹内は今井を殴る。

今井が故意に裏切っていたわけではないことを知る竹内だが、その後も暴力で解決しようとする竹内と刑事としての信念で行動する今井はぶつかりながらも絆を結び、ついには刑事とヤクザで兄弟分の盃を交わす。

その後、ヤクザと癒着していた警察上層部に竹内の組の人間は殺されていき、裏切り者まで発覚したことから、竹内の怒りにさらに火がつき、竹内、今井の最終決戦が始まる。




シリーズ続編にして完結編。

似た境遇で生まれ育ったヤクザと刑事が兄弟分の盃まで交わすようになるが、結局最後はヤクザと繋がる警察上層部と竹内、今井の抗争となる。

裏切り者が、後半正体を露わにして最終の抗争に突入していく。

ちょっとこの時期ウエイト増量気味だった竹内力と、今井雅之両方とも適役で好演しているし、先輩刑事の諏訪太郎や、怪しい伊藤洋三郎も役に合っている。

前作より展開が派手になり、最終的にはヤクザ抗争に刑事が巻き込まれて犠牲になっていく辺りはちょっと変わっている。

また竹内が抗争に突入するため、堅気になるように勧めた子分の大久保貴光が、実家の母に電話し、今後は堅気として幸福に暮らしていくのかと思わせるも、ヤクザ抗争とは何の関係もないヤク中で、前に大久保が善意で説教したグレート義太夫に刺されて死ぬ末路なども描かれている。

しかし全体的には、ちょっとバリエーションの違う展開になっているだけで、それほど異色というか新味な出来という感じではない。

死んだ兄弟分の残された妻・川村亜紀を密かに守っている竹内が、川村が働く花屋の店主に支店を持たせるからと身体を要求されたため、怒って花屋を殴り逮捕されると、今井が花屋を脅して訴えを取り下げさせる場面は、明らかに刑事の職権乱用だが、しかしまあ花屋が狡猾な奴なので、別にこれはこれでいいだろうとは思わせる。

竹内は殴り込みに行く前に、長年両想いだったのだろう川村と結ばれるが、川村亜紀は昔は軽いグラドルだったが、それから時を経て、いい感じにしっとりしたテイストとなっているのもあってか、わりと竹内の相手役に足る好演をしている。

定番なものからの多少のマイナーチェンジは随所に見受けられるが、やはり全体的にはまあまあな出来といったところの一篇。 2017/09/26(火) 00:06:11 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『ロシアン・スナイパー』




セルゲイ・モクリツキー『ロシアン・スナイパー』、

1941年、ナチス・ドイツはソ連に侵攻するが、大学生のリュドミラ・パブリチェンコ=ユリア・ペレシルドは、女性ではあるが天性の射撃の才能があり、それが注目されてスナイパーとなり、戦場に行くことになる。

ユリアはナチス兵を多く狙撃し、ナチスに”死の女”と呼ばれ恐れられる。

だがソ連軍上層部には英雄扱いされるのと同時に、戦意高揚の象徴として利用されるようになっていく。

敵を狙撃する任務を遂行しながらも、ユリアは戦場で恋をするが、しかし戦地で恋人は戦死してしまう。

戦況はその後悪化し、ソ連軍は要塞に追い詰められていき、10カ月間の攻防戦を繰り広げることになる。

ユリアも失意の中奮闘するが。




旧ソ連に実在した女性スナイパー、リュドミラ・パブリチェンコを描いた実録映画。

リュドミラの波瀾万丈な人生を描くと同時に、派手な戦闘場面も中々の迫力で描かれている。

だから実録映画であることを途中つい忘れて、荒唐無稽なまでに天才的な、”死の女”とまでナチスに怖れられる凄腕の女スナイパーの死闘を描いたエンターテイメントな戦争アクション映画にもだんだん見えてくるのだが、しかしリュドミラの過酷な人生や生な息吹、女としての恋情や愛する者を失った哀しみが痛々しいまでにリアルに描かれてもいるので、やはり実録映画としての重みが、まるで重低音のように響いてくる映画になっている。

そういう意味では、映画としての見せ場は派手だが、中々厚みのある作品である。

リュドミラ役のユリア・ペレシルドは哀愁と内なる強さが同居した、まるで”さそり”を演じていた時の梶芽衣子のような個性が役によく合い、恋愛描写もわざとらしい色恋挿話を描いたりせずに、直観的に男女が戦場で結ばれていくダイレクトさには自然さがあり、それが荒々しくも壮絶な戦場における恋愛というものをリアルに体現しているように見える。

ロシア映画なのに、反戦映画的だったり当時の軍部の狡猾さを捉えた描写が随所に明確にあるのには、よく検閲されなかったなとちょっと驚いたし、アメリカ側がリュドミラにかなり理解を示し、元アメリカ大統領夫人のエレノア・ルーズヴェルトとの交友が描かれる場面もあり、と元々こちらが想像していた、ロシア側にとって国家的に都合がいいだけの英雄を描いた映画ではないところは中々いい。

リュドミラはナチスを大量に殺した英雄ということかもしれないが、しかしそこには大量虐殺をやったナチスを、同じく大量に殺した死の女の重苦しさの気配がかなり出ていて、とても英雄の映画には見えないリアルな痛々しさが漂っている。

人間ドラマとしても派手な戦争アクション映画としてもよく出来ている、わりと秀逸な一篇。 2017/09/23(土) 00:06:08 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

追悼 ハリー・ディーン・スタントン




ハリー・ディーン・スタントンさんが亡くなった。

91歳と長生きされたが、実にアメリカ映画的な顔立ちや存在感の名優だった。

やはり主演作『パリ・テキサス』での名演の印象は強く、また世間的にも代表作であろうが、主に脇での活躍が多かった名バイプレイヤーだった。

『断絶』『ストレート・タイム』、『レポマン』『エイリアン』などでも印象深い好演を見せ、デヴィッド・リンチ映画にはその個性や存在感がかなりよく似合い、常連俳優だったが、ある意味ハリー氏の存在感というのはリンチワールドの一角を占める構成要素だったような気がする。

特にアメリカ郊外の田舎町にいる、リアルだが妙に癖のあるアメリカ人役がリンチ映画では特に映えていた気がする。

『ワイルド・アット・ハート』や『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』でも良かったが、珍しく何も起こらない長閑なリンチ映画『ストレイト・ストーリー』でも、アメリカの農村地域にハリー氏が何気なく登場するだけで、妙にアメリカの田舎町の狂気の気配が漂い、長閑な映画に不思議な緊迫感の亀裂が入っていた。

その他、『フール・フォア・ラブ』『スラムダンス』や、近年でも、前にここでレビューを書いた『セブン・サイコパス』他などで好演していた。

アメリカ映画の魅惑を体現していたような名優だった。

ハリー・ディーン・スタントンさん、ご冥福をお祈り致します。





2017/09/19(火) 00:06:59 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

『初体験物語 未果のラブラブ大作戦』




田村孝之『初体験物語 未果のラブラブ大作戦』、

女子大生の未果=愛斗ゆうきは高校時代から知り合いでもないサーファーの江口拓也に遠くから片思いしていた。

憧れの江口一途なため、愛斗は20歳になってもヴァージンだったが、幼なじみの村田宏一郎も童貞だった。

しかし村田を好きになった女性がいて、それは愛斗の友達だった。

愛斗は江口が管理するペンションで、村田が入っているサーフ部の夏合宿を行う事を知り、サーフィン未経験ではあるが憧れの江口にヴァージンを捧げるために無理矢理サーフ部に入部する。

その後サーフ部は合宿に行き、そこで江口と会った愛斗は舞い上がり、村田や他の部員も巻き込んで脱・ヴァージンを果たそうと奮闘する。




女子大生のラブコメ映画。

まあ内容的には絡みのシーン有りの、少女マンガの軽いやつみたいなものである。

江口に憧れていたはずの愛斗が徐々に幼馴染の村田の気持ちに気がつき、本心では愛斗も村田に気があったため、最終的には幼馴染のヴァージンとチェリーボーイがくっ付いてハッピーエンドという、いかにもなテンプレ純愛ラブコメである。

しかしサーフ部の他の脇役カップルの恋愛の経緯も同時に描き、江口とメロメロになっている愛斗の恋愛展開も描かれる。

江口拓也は同名の人気声優とは別人だと思うが、いかにもモテモテそうなイケメンプロサーファーのリアリティー満点なので、王子様役に中々合っている。

江口は前半は爽やかイケメンサーファー風で、後半徐々に裏の顔が発覚してきな臭くなっていくのだが、悪人の素顔が暴かれた時「(プロサーファーという)好きなことで生きていくっていうのは大変なんだよ」と漏らし、そこにちょっと青春の挫折や影が感じられ、結局悪役なのに中々印象深い存在感である。

テンプレドラマではあるが、それぞれの人物の気持ちを脇の脇までわりとちゃんと描いているし、悪役の描き方もよく、そんな中での愛斗と村田のテンプレ純愛話なので、そう安いドラマという感じもしない。

まあ大した作品ではないが、それでもそれなりに見てはいられる一篇。 2017/09/16(土) 03:43:04 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)
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