0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『哀しき抗争』




すぎやまたろう『哀しき抗争』、

勢力拡大を目指す関東木川田会と、共存共栄志向の穏健派の京北連合一家が対立し、関東は真っ二つに割れようとしていた。

関東の相談役・伊吹吾郎がそんな状況の調整をしようとするが、根本的な解決には至らなかった。

その頃、京都の板前・松田一三は、伊吹が危篤だと異父弟の金子昇から聞いて、久しぶりに上京する。

実は松田と金子は幼い頃、伊吹に拾われて育てられたのだった。

伊吹は危篤というほど悪くはないが入院していたが、それにより関東木川田会四代目会長の武田幸三は、邪魔な伊吹を抹殺する絶好の契機を得る。

抗争が激化する中、松田も状況に巻き込まれて行く。




主演の松田一三が企画にも関わっている作品。

武田幸三がさすが元キックボクサーらしく、迫力のある組長役を好演しており、子分やチンピラより組長が一番武闘派で凶暴そうというキャラにぴったり合っている。

演技も中々悪くない。

しかし松田や金子と伊吹の回想シーンが妙にダラついていたり、あまりにも手薄な入院している伊吹の警備態勢などが不自然すぎたりと、どうにもピリッとしない出来である。

別に他の役者陣がダラダラ演じているということなど全くないのだが、武田幸三ほどには気魄に満ちたものが感じられず、それはたぶん、伊吹や渡辺裕之を妙にほのぼのしたキャラに描きすぎているからそう見えるのだろう。

その辺りの緩急のバランスが悪く、妙にダラついて見えてしまうところが残念である。

松田一三はそう悪くなく、カタギだが筋の通った奴感をきちんと出しており、主役足り得ている。

しかし全体に漂う、如何ともし難いダラつきやヌルさが、映画から緊張感を奪い、緩急のバランスをも崩してしまっている。

脇でサヘル・ローズや水沢アキが出ているキャストはちょっと意外だが、どうにもイマイチピリッとしない感じの一篇。 2017/12/26(火) 02:02:18 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『はやく起きてヨ!』

坂本太『はやく起きてヨ!』、

高野八誠は伊藤千夏に純愛に近い気持ちがあったが、二人は中々距離を縮められなかった。

だが逆に緒川まりんはやたらに積極的で、高野は緒川に言い寄られている内に関係してしまう。

緒川は元恋人がマネージするアイドルユニットにも参加していたが、元恋人は緒川に復縁を迫るも緒川は相手にしなかった。

高野の伊藤への純愛の気持ちは変わらなかったが、伊藤は過去のトラウマから男性恐怖症なため、中々積極的になれないでいた。





中西やすひろ原作コミックの映像化作品。

随所にテリー伊藤が悪魔風にイチイチ出てきて茶化す場面がバラエティ的に挿入される、いかにも安いラブコメテイストで描かれてはいるが、しかし途中から高野や伊藤千夏の純愛心理などより、高野にやたら積極的で、女の方から関係を迫る、悪女っぽい緒川まりんのお話のように様変わりしていくところが悪くない。

緒川は単に高野を弄ぶビッチキャラなように見えて、実は過去の恋愛の失敗から立ち直ろうとして、高野にゾッコンになっていく意外に情熱的な純愛キャラであることが露出していく。

そして途中からは、伊藤千夏に惚れている高野に、身体を許しながらも振り向いてもらえない緒川の、ちょっと高野より大人っぽい立場の悲しい純情がメロウに描かれていく。

最終的には伊藤千夏が、過去のトラウマからの男性恐怖症を徐々に克服し、高野とウブな者同士純愛的に結ばれていくのがクライマックスとなってはいるが、やはり緒川まりんの複雑な立場と心理を途中できちんと描いているので、それがドラマに厚みを持たせており、単なる安っぽいラブコメを脱している。

緒川まりんはこの中で一番好演している。

そういう意味では、坂本太のコミカルな中に情緒が滲む演出や、佐々木乃武良の脚本も悪くない、一見安っぽいようで意外とちゃんとした青春恋愛映画になっている一篇。


2017/12/19(火) 00:05:18 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『殺し屋サチ』




山鹿孝起『殺し屋サチ』、

暗い過去のあるサチ=成瀬心美は、殺し屋になっていた。

ある時、ホストクラブにハマり失踪している親友を探すしじみが現れ、親友を探す手伝いをサチもすることになるが、そこでホストの裏の黒幕の存在が明らかになる。

「わたしが捕まる事はない・・・なぜならわたしは地球上に存在しないのだから・・・」
が口癖のサチだが、失踪事件と共に、サチのヤクザに親を殺された過去も浮き彫りになる。




必殺仕置人みたいな女殺し屋映画。

サチ=成瀬は速水今日子や木村圭作らと組んで、現代の仕置人稼業をやっているが、依頼人となるしじみが、うっとおしいくらい真っ直ぐで、純粋&子供っぽい不思議ちゃんキャラ役にピッタリなので、見かねて成瀬がホストクラブの裏を探索するようになる展開にあんまり無理がない。

ただラスボスがマッチョな松田優なわりに、大した格闘シーンがあるわけでもなく、成瀬はわりとあっさり最後に松田を倒してしまうのが拍子抜けである。

ホストクラブのキツイ実態や、自殺したしじみの親友の心情、裏にヤクザがいる黒い非情な裏側などを中々描いているわりに、肝心のクライマックスがちょっとあっさりしすぎているように思える。

また急に終盤、殺しの興奮を鎮めるためか、成瀬と仲間の木村の絡みの場面となる展開も、なんだか不自然に見える。

設定も悪くないし、そうつまらなくもない。

成瀬の女殺し屋役も似合っている上、しじみがかなり好演しているわりに、どうもイマイチ膨らまし方が足りない気がする。

そう悪くはないが、そうした残念な部分が少し見受けられる一篇。 2017/12/02(土) 00:05:25 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『裏門釈放』




辻裕之『裏門釈放』、

大阪西刑務所で、ヤクザ幹部の木村一八が屋上から飛び降り自殺をした。

囚人は全員、舎房に戻されるが、ある舎房の房長の宅麻伸は囚人たちに、木村から聞いた彼の半生を語る。

12年前、木村は少年院時代の仲間を頼って新世界に行きヤクザになるが、うだつが上がらない中、元ヤクザの屋台のオヤジ、火野正平と仲良くなる。

火野は若い頃の自分に似ている木村を気に入り、木村の影の参謀となり、木村は計算された売り出し方で頭角を現していく。

だがそれが気に入らない若頭と対立するようになる。

かっては敵対していた川本淳市をも子分にし、木村は若頭と対立しながら突き進むが。





村上和彦原作で回想形式の作品。

木村一八は村上和彦原作作品になると、『代紋の墓場』シリーズもそうだったが、バリバリの関西弁を快活かつ流暢にまくし立て、かなりユーモラスにコテコテの関西ヤクザを好演するが、この作品でもその路線の芝居を快調に演じている。

謂わばこの木村の快活な芝居が映画全体のリズムとなり、中々テンポのいい作品となっている。

いかに木村が派手かつ効果的にヤクザとして売り出すか計算ずくで実行する様を、かなりコミカルに描いているが、その内容に木村の芝居がよく合っている。

このパート1では、冒頭の木村の飛び降り自殺の原因までは描かれていないが、こんなに快調な木村と、自殺というものにはやはりギャップが感じられる。

まあこの後、暗転もしていくのだろうが、まだその暗転の気配はこのパート1ではあまり感じられない。(その伏線は描かれているようだが)

脇の川本淳市、火野正平も好演しているが、やはり木村一八の快活でユーモラスなコテコテ関西弁芝居が目立っている一篇。 2017/11/18(土) 00:06:42 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『破門組 Ⅱ』




金澤克次『破門組Ⅱ』、

破門組の組長・原田龍二は、木更津で暴れる若いチンピラギャングにヤクザ組長の堀田眞三が殴られたため、堀田の依頼でギャング一派を懲らしめるが、ギャングのリーダーは巨大組織組長の実子だった。

破門組はその組長に慰謝料と組長引退を要求する。

しかし次にまた堀田の依頼で、破門組の木村圭作が中国人の悪党組織を退治に行くも、これは罠で、相手はチャイニーズマフィアとプロの殺し屋であり、実は大組織による報復だった。

圧倒的な結束力の破門組に危機が迫る。




破門組シリーズの2作目。

破門組の面々はクールなリーダー原田龍二をメインに、マッチョな松田優、武闘派の木村圭作、男色の宮本大誠、ダンディな川本淳市と皆キャラが立っていて、それぞれがコミカルな上に魅力的なチームだが、2作目では大組織に靡いた堀田の裏切りに遭い、窮地に陥る。

結束力の強いチームなのだから、危機になっても、まあ一人一人死んで行く終わり方を想像させたのだが、しかしながら、なんとチョロっと出てくる大組織の藤巻潤に言いくるめられて、破門組のメンバー2人が最後に裏切り、結局メンバー同士で殺し合って、破門組崩壊でエンドとなる。

一応生き残った原田と、原田を逆恨みしていたのに、不本意ながら原田を助けた中丸シオンの二人が新たな破門組ということになって終わるのだが、別にテキトーに寄り集まってるヤクザの愚連隊の結末が内部分裂の殺し合いで終了ならそう意外でもないが、破門組はまるで特撮戦隊ヒーロー集団並みにメンバーがそれぞれコミカルにキャラ立ちしてまとまっていただけに、なんとも意外な終わり方だなとは思わせる。

尚、パッケージの大沢樹生は文字通りの友情出演で、チョロっと出てくるだけである。

後半はわりとハードなアクション展開になる、一応捻りはある一篇。 2017/10/07(土) 00:06:28 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)
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