0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『エミリ』




藩平太郎『エミリ』、

養護施設で育った恵美里=つぼみは、佐々木麻由子夫婦に引き取られる。

しかしつぼみは徐々に佐々木に反抗するようになり、逆に自宅で株取引している養父の井上真一にはやたらと気のある素ぶりを見せ、井上の方もまんざらではない様子を見せる。

しかし、それはつぼみの恐ろしい過去にまつわる行動の再開だった。



ホラー風味のセクシーサスペンス。

だいたいあらすじからして明らかだが、これは「エスター」の設定をそのままやっている代物だろう。

あちらの息子や娘が出てこないだけで、基本、大筋は「エスター」まんまに話が進むし、終盤、佐々木が出自を調べて発覚する恵美里の正体も、まあ似たようなものである。

違うのは、こちらはセクシーVシネ系だから、養父が露骨に恵美里とデキてしまい、最後も恵美里が成敗されず、半ば佐々木が旦那を恵美里に寝取られた恰好で終わっていくところだろうか。

しかしその終わり方はあまりに中途半端にすぎるし、お話の展開も、恵美里が養父を狙っている話に集約されていくばかりで、恵美里の隠れた悪魔的な行いの描写や、終盤発覚する極悪な過去の描き方もかなりあっさり気味である。

それでも恵美里役をつぼみが中々不気味に演じているので何とか見ていられる。

佐々木麻由子の養母役も悪くない。

つまりキャスティング的には、元ネタ「エスター」にそれほど引けを取ってはいないのに、ちゃんとしたホラーにしようとしていない、作り手の中途半端さがイマイチ締まらない作品にしてしまっている感がある。

それでもサスペンススリラーテイストは、つぼみの好演や存在感も相まって、それなりに出ていないこともないのだが、元ネタの醍醐味を、セクシー部分だけ濃くしたわりに、随分と薄味に換骨奪胎してしまったなという残念さが残る出来である。

確かに制作予算は、こちらはかなり安いだろうが、しかし、せっかくの元ネタを、その日本版としてもうちょっと何とか出来ただろう、とは思わせるイマイチな一篇。 2018/04/14(土) 00:06:49 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『虎狼の群れ』




藤原健一『虎狼の群れ』、

孤島の火浦島は、三つの組により均衡が保たれていたが、3年前、二つの組織間で麻薬の利権を巡り抗争が巻き起こった。

その際に、組の若頭、山下真司が殺されたことから、火浦署の刑事・菅田俊らは厳しい取締りを行い、一つの一家が解散する。

その後、時を経て、菅田の幼馴染の解散した組の若頭・小木茂光が出所してくるが、その頃、ある組織が暗躍し始める。

その組と対立する組織の組長・阿部亮平は、火浦島を守るためには抗争も辞さない覚悟だった。

火浦島に、3年前の抗争を繰り返す可能性が生まれ、菅田は新人刑事の忍成修吾と組んで、阿部と同じ心境で火浦島を守ろうとするが。




名バイプレイヤー・菅田俊の主演が嬉しい、刑事が主役のヤクザ映画。

今年、東映で柚月裕子原作の「孤狼の血」が映画化されるが、こちらはその原作を映画化しているわけではないものの、随所に似たような設定や場面が出てくる。

まずヤクザまがいの風貌で、刑事なのにジャガーを乗り回す菅田俊、
新人刑事の忍成修吾とコンビを組み、最初に菅田が、パチンコ店にいるチンピラに、忍成に喧嘩を売らせる場面、
行きつけの飲み屋に曰くありの女性がおり、広島ならぬ孤島の火浦島を守ろうと、刑事の菅田とヤクザの阿部が懇意にしている設定や、刑事の菅田とヤクザの小木が幼馴染という設定などなど、随所に、まるで「孤狼の血」を彷彿とさせる場面が出てくる。

東映映画化作の方は、役所広司と松坂桃李の刑事コンビが主役だが、なんとなく先取り感がある作品である。

キャスティングもいつものVシネマと少々違い、山下真司、渡辺いっけい、小木茂光、忍成修吾、松村雄基、大友康平他などなどが脇を固めている。

グラドルの葉加瀬マイが菅田の娘役かと思ったら妻役で、随分年の離れた妻役をやっているが(32歳差)、葉加瀬の前夫も小木茂光で、こちらもかなり年が離れており(26歳差)、葉加瀬は老け専かファザコン設定なのか?とすら思えてくる。(苦笑)

阿部亮平はチンピラ役が多いが、ここでは組長役で、中々貫禄を見せている。

葉加瀬が最初にあっさり死んでしまったり、抗争にイマイチ迫力がなかったりもするが、飯島大介の組長が痴呆症気味で呆け出しているという設定は、ちょっと新味だろうか。

いつもは脇役が多い菅田俊は、主役としての貫禄をバリバリ見せ、役にもよく合い、かなり存在感を出して好演している。

こじんまりしているが、悪くない一篇。 2018/04/07(土) 04:23:36 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『頂点』





辻裕之『頂点』、

ある組の若頭補佐の波岡一喜は、組長の片桐竜次の実子で、ステゴロの竜と呼ばれて、いつも他の組織相手に暴れ、組長を困らせていた。

波岡の見張り役には親友の若頭補佐の遠藤要がついていたが、波岡は我流を貫いていた。

若頭の石橋保は、そんな波岡に期待していたが、石橋はある時、自分が癌であることを波岡と遠藤に話す。

二人は驚くが、石橋は最後として、波岡を若頭にして、自分が死んだ後の後任にしたいと言う。




波岡一喜主演の頂点(てっぺん)を目指すチンピラヤクザを描いた作品。

喧嘩して暴れまわるのが趣味みたいなイケイケなチンピラヤクザ役に波岡がよく似合い、周りを片桐竜次や石橋保、千葉真一、渡辺裕之、大沢樹生、岡崎二朗らが固めている。

大沢樹生は怪しい役どころだし、久保田秀敏の波岡の不良時代のライバルが武器商人のような立場で話を引っ掻き回す展開である。

また波岡の相手役が、傑作「暗闇から手をのばせ」やTV「リバース・エッジ 大川端探偵社」などで好演していた小泉麻耶で、中々ヤクザの波岡の友達以上恋人未満ぐらいの女の役にピッタリ合っており、あっけらかんとした個性で好演している。

二つの組の対立と、久保田と波岡の因縁、久保田と岡崎二朗の関係の変化、石橋保のガンの挿話などが色々絡んでいき、わりと脇役まで明確にキャラ立ちして個性を皆見せている。

喧嘩っ早い波岡と遠藤のコンビも息が合っているし、全体的には抗争を描きながらも、その狭間で、様々なヤクザの挿話を描いていく展開である。

まあまあな一篇。 2018/03/06(火) 02:37:29 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『覇王 群狼の血脈』




小沢和義『覇王 群狼の血脈』、

内藤新宿一家は分裂を極めた抗争を繰り返していた。

小沢和義との死闘に敗れた山口祥行が生死を彷徨う中、落合晴音を推す山口の一派内はギクシャクし始める。

黒石高大は、元マル暴刑事の本宮泰風の単独行動が気に入らず、本宮を監禁してしまう。

しかしそれは、小沢を立たせて覇権を握ろうとする井田國彦一派による陰謀だった。

その頃冨家規政は、大阪難波会会長・宇梶剛士との縁を強めていく。





覇王シリーズの一作。

岩佐真悠子が死んでからの小沢和義は、殺し屋的存在感から、覇王を狙う存在感の方を今作では強めているが、山口が生死を彷徨う中、山口一派が敵の策略により、内部分裂に至るのがメインで描かれている。

山口祥行はずっと病床にふせっているので、主役は寧ろ本宮泰風と北代高士に見える。

冨家規政が大阪の大組織と繋がる打算から、侠気を見せるラストの描写も悪くない。

監督の小沢も冨家も悪役的だが、そちらの人間描写を忘れていないところも中々いい。

わりとよくまとまっている一篇。 2018/02/03(土) 02:19:48 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『哀しき抗争』




すぎやまたろう『哀しき抗争』、

勢力拡大を目指す関東木川田会と、共存共栄志向の穏健派の京北連合一家が対立し、関東は真っ二つに割れようとしていた。

関東の相談役・伊吹吾郎がそんな状況の調整をしようとするが、根本的な解決には至らなかった。

その頃、京都の板前・松田一三は、伊吹が危篤だと異父弟の金子昇から聞いて、久しぶりに上京する。

実は松田と金子は幼い頃、伊吹に拾われて育てられたのだった。

伊吹は危篤というほど悪くはないが入院していたが、それにより関東木川田会四代目会長の武田幸三は、邪魔な伊吹を抹殺する絶好の契機を得る。

抗争が激化する中、松田も状況に巻き込まれて行く。




主演の松田一三が企画にも関わっている作品。

武田幸三がさすが元キックボクサーらしく、迫力のある組長役を好演しており、子分やチンピラより組長が一番武闘派で凶暴そうというキャラにぴったり合っている。

演技も中々悪くない。

しかし松田や金子と伊吹の回想シーンが妙にダラついていたり、あまりにも手薄な入院している伊吹の警備態勢などが不自然すぎたりと、どうにもピリッとしない出来である。

別に他の役者陣がダラダラ演じているということなど全くないのだが、武田幸三ほどには気魄に満ちたものが感じられず、それはたぶん、伊吹や渡辺裕之を妙にほのぼのしたキャラに描きすぎているからそう見えるのだろう。

その辺りの緩急のバランスが悪く、妙にダラついて見えてしまうところが残念である。

松田一三はそう悪くなく、カタギだが筋の通った奴感をきちんと出しており、主役足り得ている。

しかし全体に漂う、如何ともし難いダラつきやヌルさが、映画から緊張感を奪い、緩急のバランスをも崩してしまっている。

脇でサヘル・ローズや水沢アキが出ているキャストはちょっと意外だが、どうにもイマイチピリッとしない感じの一篇。 2017/12/26(火) 02:02:18 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)
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