0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『ワールド・オブ・ライズ』




リドリー・スコット『ワールド・オブ・ライズ』、

CIAの工作員レオナルド・ディカプリオは、世界中を飛び回り、ヤバイ任務に体当たりしていた。

だが彼の上司のベテランCIA幹部ラッセル・クロウは、アメリカの本部や自宅などの平和で安全な場所から、現場のディカプリオを顧みない冷徹な指示を出していた。

全く正反対のディカプリオとクロウは、多くの殺戮を行っている国際的テロ組織のリーダーを捕獲する任務についていた。

だが二人の反りは合わず、ディカプリオがイラクで接触した情報提供者をめぐって対立する。

ディカプリオはクロウに逆らえず、情報提供者を泳がせるが、ディカプリオの身元がバレそうになり、射殺する。

そのためディカプリオは銃撃戦に巻き込まれ、相方が死に、ディカプリオも大怪我をする。

だがその後、怪我から快復したディカプリオに、情報提供者の資料から、テロ組織リーダーの関係者の隠れ家がわかったため、クロウはまた指令を出すが、クロウの非情さにディカプリオは不満を持ちながらもヨルダンへ行く。




ウィリアム・モナハンの原作を映画化した、9・11以降のビンラビン捕獲、抹殺に燃え、テロと対峙していた時代のアメリカCIA工作員と幹部を描いたような映画。

ラッセル・クロウはリドリー・スコットとはよく組んでいるが、この映画のCIA幹部役のために20キロ増量するよう、リドリーに頼まれたらしい。

確かにクロウは、テロに対峙するCIAのくせにヌクヌクと安全なところで暮らすナマケモノのような風情だし、現場でキビキビ動くディカプリオの精悍さとは対照的である。

結局最後は、現場の苦労や事情も知らずに、強引かつ冷酷な指示ばかり安全なところから出すクロウにブチ切れて、ディカプリオはCIAを辞めてしまうのだから、これはどこか、CIA幹部やアメリカの傲慢さを批判している映画なのかもしれない。

しかし現場で活躍するディカプリオがちっともカッコ良く見えないのである。

作り手側はどういうつもりか知らんが、現場で振り回され、すぐ感情的になり、非情な指令にも反抗ばかりした挙句、治療に行った現地の病院で知り合った看護師と恋仲になり、その看護師もディカプリオのためにテロ組織に誘拐されてしまい、と、ディカプリオは精悍で大変なのはわかるが、イチイチ青臭く、CIA工作員としての冷静さを欠き、任務先で現地の女性と恋愛するような甘ちゃんぶりで、結局その甘さを突かれて女性は誘拐されてしまい、なんだかCIA工作員としては能力が足りない、不適格者に見える。

挙句、ディカプリオはCIAを辞めて、その現地の女性と紛争だらけの中東で暮らすことにするのだから、随分と甘い人間に見える。

だからラッセル・クロウが、ディカプリオに優秀な工作員として、最後まで未練を持っていることも腑に落ちないのである。

寧ろ、卑劣なテロに対し、クロウは冷静な指令を出しているだけであり、テロを撲滅したい本気度や戦略能力は、ディカプリオなんかより高いように見える。

クロウはアメリカの非情と傲慢さの象徴かもしれないが、しかしながらテロ組織など、その何倍も傲慢で非情極まりない。

確かに現場で過酷な活動を行っているのはディカプリオだが、テロ組織と対抗しているのにどこか甘々な認識が透けて見える。

この映画はその甘々な認識で作られた映画に見える。

それも戦地に行かないとは言え、本気でテロと戦っているCIAを、もっともっと安全な「映画というファンタジーのお花畑」から見下して、綺麗事ばかり言いながら作ったような映画に見えるのだ。

だいたい、恋仲となった看護師を助けに行ってディカプリオが拷問されるのも、元々工作員として出向いた紛争地帯で現地の女性と恋仲になる甘さを見せ、その甘さを突かれて、彼女をテロとの紛争に巻き込んでいるのだから、謂わばディカプリオ自身が招いた逆境である。

だからディカプリオは精悍かもしれないが、アクションやその活躍がちっともカッコ良く見えず、寧ろ青臭くて甘々に見え、逆にナマケモノのような風体のアメリカの傲慢さの象徴のようなクロウの方が、現実を直視し、本気でテロと戦っている存在に見えてきて、これは作り手の意図とは真逆ではないのかなと思う。

ディカプリオがCIA工作員を辞めるだけでなく、中東で暮らしていこうとするラストには、こいつ頭の中お花畑なのか?とすら思えてくる。(苦笑)

テロ組織との対決に纏わる展開はキビキビしているし、状況=戦局がコロコロ変っていく展開もフレキシブルでいいのだが、どうもイマイチなところが随所にあり、世評が高いのが腑に落ちない一篇。 2018/05/05(土) 01:15:25 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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