0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『姐 極道を愛した女 桐子』




磯村一路『姐 極道を愛した女 桐子』再見、

二階堂組組長、石橋蓮司の妻・桐子=高橋ひとみは、かっての恋人で、8年前にヒットマンとして仕事をした後、刑務所に服役していた二階堂の子分の勇=豊原功補が出所することを知る。

かって勇と桐子は深く愛し合っていたので、勇との再会が桐子は密かに嬉しかったが、しかし8年経った今、桐子は無理に組長の妻となっているため、今や二人は極道とその姐という関係でしかなかった。

その頃、二階堂組に属する南東連合では跡目争いが激しくなり、同じ連合内で抗争となるが。



家田荘子原作の極妻ものを、あくまで磯村一路タッチで描いた作品。

かって恋人同士だった高橋と豊原が、今はもう昔に戻れない喪失感とメロウな哀しみを抱えて、現実では他人同士の顔をしながら、絶えず過去の愛念を回想する設定と展開には、ピンク映画時代の磯村一路的メロドラマがそのまま重なる。

ここで二人を引き裂くヤクザ組織のしきたりや石橋蓮司の非情は、いつもの磯村映画なら無機質で虚無的な渇いた都会や現実の非情に匹敵するだろう。

また、その喪失に諦念を持って接しながらも、過去のエモーションがメロウに露出し、映画全体のジェントリーな叙情となっていく辺りも極めて磯村的である。

ちょっと描き方が反復パターンに過ぎるところはあるが、高橋ひとみが結局喪失感を抱えながらも過去の愛念を忘れない終わり方は、さすがに極道映画だからハードな相貌にはなるものの、これも明らかに磯村映画に通底するテーマ性を貫徹したエンディングと言える。

豊原功補が味のある筋の通った任侠ヤクザを好演しているが、その優しさが、磯村ピンクにおける主役 下元史朗の優しさと重なって見える。

脇の菅田俊、石橋蓮司、白竜なども好演している。

実に磯村一路作品らしいメロウな極妻映画に仕上がっている、佳作な一篇。 2017/11/25(土) 01:30:58 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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