0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『アウトレイジ 最終章』




北野武『アウトレイジ 最終章』、

関東の大暴力団組織・山王会と関西の大組織・花菱会との抗争の後、ビートたけしは韓国に渡り、日本と韓国の間の大物フィクサー・張会長=金田時男のところにいた。

だがある日、取引きで済州島に来ていた、たけしのやっているデリへルの客の花菱会幹部・ピエール瀧がトラブルを起こして、たけしらと揉めた挙句、会長の手下を殺したため、張グループと花菱組のトラブルに発展していく。

怒るたけしと子分の大森南朋は日本に戻り、過去を清算しようとしていた。

その頃、花菱会ではトップの座をめぐって、証券マン上がりの会長・大杉漣と、叩き上げ幹部の西田敏行らの間で内紛が起こり、大杉は西田を、跡目を取らせる約束を餌に塩見三省に抹殺させようとするが、西田側の塩見は西田を張グループが殺したように偽装して、大杉への巻き返しを画策していた。




『アウトレイジ』シリーズ最終作。

だが、3作中では一番タイトにして地味な出来かもしれない。

どうやら最終作はあくまでドライに描いたということらしく、おまけに『ソナチネ』っぽさも排除したようで、それが物足りなく感じさせもするのだが、それでもタイトに展開していくダレの無さや、全体に溢れる北野武映画独特のダークな色調や気配はばっちり健在で、これは素晴らしかった。

アクションシーンもちょっと少ない気がしたし、おまけに花菱会と揉める韓国の張グループ側が全く抗争する気がないので、抗争はあくまで花菱会上層部のモメごとメインとなり、ほとんど西田敏行と塩見三省のお話に見える。

今作では前作以上に、西田や塩見らの迫力満点の顔芸で語るスタイルが、およそ伊丹十三『ミンボーの女』の中尾彬の顔芸ぐらい露骨になったが、それが映画の強度にはなっているし、この顔のクローズアップの多さやフェイドアウトなどの挿入の仕方が、さらにハリウッド50年代のギャング映画っぽいタイトさになっている。

それに幾ら花菱会の内紛ばかりとは言え、そこに花菱会のヤクザとは全く違う行動原理で動くたけしのフリーダムな襲撃が不意打ち的に巻き起こるので、今までで一番ややこしい抗争にも見える。

実際映画の展開自体、かなり捻った展開を見せる。

今回のたけしの役どころは、たぶんシリーズ中で最もカッコイイ、殺し屋的な役どころだが、ただそれが義理を重んじる任侠ヤクザ=たけしと実利にしか目がない現代ヤクザの対立の構図という、ありがちな任侠ヤクザ映画のパターンにハマりすぎた感が少しなくもない。

また前作の高橋克典の台詞無しのヒットマン役のような強烈な端役のサプライズがないのも惜しい。

たぶんそれは原田泰造の族上がりのヒットマンに代替されたのだろうが、さすがにあの高橋克典の存在感にまでは至っていない。

それと松重豊の刑事はちょっと中途半端な役どころだし、名高達男、光石研の組もイマイチ地味である。

また池内博之はどういう立場なのかよくわからない内に殺されてしまった感もあった。

しかしそれでも、キャスティングはほぼ完璧ではないかと思う。

特に張会長役の金田時男の存在感は前作以上だろう。

Vシネ系俳優陣も脇ではあるが、いつも以上に出ていたが、中でも白竜は脇ではなくほとんど準主役に近い役どころで好演している。

編集があっさり気味で、ラストも随分あっさり終わるなとは思ったが、それがダレない映画のテンポを作り出しているし、北野武映画独特のリアルな気配と緊張感が充満したダークな映像世界のアクセントにはなっている。

と、全体的には地味になった印象もあるが、それでもタイトな魅力ある最終作にはなっている佳作な一篇。 2017/10/14(土) 00:07:52 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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