0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『アウターマン』




河崎実『アウターマン』、

特撮ヒーロー番組『アウターマン』は50年放映されていた。

過去に平成アウターマンシリーズで主演した俳優の塩谷瞬、古原靖久、戸塚純貴はアウターマン俳優のイメージが強すぎて、他の役のオファーもなく、今やアウターマン絡みのファンイベントぐらいしか俳優の仕事が来ない、売れない役者になっていた。

ある日、日本各地で地震が起こり、その時テレビヒーロー番組とそっくりの本物のアウターマンが登場する。

人々は驚き熱狂するが、防衛省はアウターマンの敵役であるシルビー星人・タルバの本物をも捕獲していた。

タルバは、実はアウターマンこそが侵略宇宙人であり、地球をテラ・フォーミングしてアウター星の環境にして地球に移住を計画しており、そのためにヒーロードラマで50年間地球人を洗脳してきたのだと言う。

人類にも、実は宇宙を彷徨い流浪しているだけのホームレス宇宙人でしかないシルビー星人にもアウターマンを倒す能力はなかった。

だがアウターマンを倒すたった一つの方法は、アウターマンに全く愛着がない平成アウターマン俳優たちとタルバが合体変身することだとタルバは言うが。






特撮ヒーローと宇宙星人の善悪設定を反対にした特撮パロディ映画。

一応プロットはつまらなくないし、河崎実は過去に『いかレスラー』という佳作も撮っているので、そうそうただのバカ映画ばかりでもないだろうと思いもしたのだが、まあバカ映画ではないものの、あまりいい出来とは言い難い映画である。

キャスティングには、主役の塩谷瞬、古原靖久、戸塚純貴以外にも、真夏竜、沖田駿一、きくち英一、北岡龍貴、筒井巧などなど、過去に特撮ものに出演していた役者陣を揃えているし、ヒーローもので主演した役者が、その後そのイメージが強すぎて他の仕事が来ないとか、それでいつまでもヒーローイベントやヒーローグッズの店、ヒーローの店的な飲み屋で食っていくしかないという、現実に有り得る描写を盛り込んでいるのも悪くない。

それにヒーローに熱狂しているのは特撮オタクやファンばかりで、演じてる役者たちはあくまで仕事でしかなく、それで食ってくしかない食い扶持でしかないからヒーロー自体に思い入れがゼロだったりするというのも、現実、本音ではそんなものかもしれない。

そういう皮肉なリアル描写をきちんと入れているのはいいのだが、映画自体はそうおチャラけてもいないのに妙にイマイチ感が強い。

まず随所の描写が緩い。

特撮ものの監督は、さすがに特撮シーン以外の普通の描写もどうコミカルに描こうが、それなりのクオリティを保っているが、この監督はいつまで経ってもその辺りが昔の素人の自主映画レベルの緩さである。

せっかく特撮オタクを防衛省の対策チームに入れる展開にするなら、もっと特撮オタクの能力の高さが自然に伝わるように描けばいいのに、相変わらず昭和ヒーローオタクと平成ヒーローオタクの言い合い描写ばっかりで、その描き方も雑である。

それに洗脳されていた地球人たちの描写がテキトーすぎて、まるで書き割り程度の実に浅い描き方だったりする。

だいたい特撮オタクに人生賭けてきたような者たちが、そんなにあっさり簡単に自分たちのヒーローが侵略者だったというのを受け入れられるのかよとも思えるし、一般大衆の描写に至ってはあまりにテキトーすぎる。(苦笑)

せっかく善悪逆転設定にしたことで、地球人の内面にパラダイムシフトが起こらざるを得ない、本来ならかなり面白くなる状況を描いているのに、その辺りの描写の重要性にかなり無頓着なのだ。

挙句、最後にシルビー星人が勝ったら、何も事情を知らない一般大衆がシルビー星人コールをし始めるのだが、まあプロレス試合のパロディのつもりかもしれないが、そこをそんなショーもない描写にするから、プロットの面白さすら消滅してしまう。

また低予算故か、特撮シーンは短い上に単調で迫力がなく、だいたいアウターマン自体が悪なんだか侵略者なんだかもはっきりしない描写で終わり、基本アウターマンは立ってるだけの印象だったりする。(苦笑)

結局特撮系俳優をたくさん集めてきたことや、プロットの悪くなさ、ヒーロー役者の隠れた実情を描いた点や、通常のヒーローと子供の約束を、シルビー星人と子供の約束という風に転換した描写以外、さっぱりダメな映画である。

というか、映画のダメな部分が、それら数々の良点の魅力を悉く相殺し、潰しまくってしまっているのだ。

その結果、なんともショボい出来となってしまった一篇。


2017/04/04(火) 00:05:24 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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