0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「デコトラ★ギャル瀬菜」




城定秀夫「デコトラ★ギャル瀬菜」再見、

一匹狼でデコトラの仕事をしている瀬菜=原紗央莉(現・松野井雅)は、ある日チンピラの粟島瑞丸に、盲目のストリッパー・栗林里莉を遠くの場所まで運んで欲しいと頼まれ、嫌々引き受ける。

だが粟島は自分の組の金を持ち逃げしており、組のヤクザたちが追ってくる。




城定秀夫による、デコトラギャルシリーズの一作。

原紗央莉はこの後、東日本大震災にショックを受けて一時期消えてしまい、その後松野井雅という名で復活したが、そういう意味で言うと、まだ6年くらい前の作品だが、一時代乗り越えた作品という感じもする。

瀬菜という名前はアイルトン・セナから来ているようだが、原は男っぽい度胸の据わった女デコトラドライバー役によく合っている。

お話は粟島のチンピラが、ストリッパーや娼婦のようなことをさせられている健気で不幸な盲目少女の栗林を食い物にする立場でありながら、急に栗林を救いたいと思い、組の金を持ち逃げして、原に二人の逃亡を頼み、ヤクザとのデッドヒートを繰り返すという、実にシンプル極まりない、チャップリン映画や途中よく話に出てくる宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をテーマにしたような、ほとんどお伽話のようなものである。

しかしながら、最悪の状況すら受け入れて暮らす栗林の健気さを、見ていて堪らなくなったチンピラの粟島が救いたくなり二人で逃亡する描写には、説明的なものが全く描かれていないのに、そこにメロウ極まる情緒と衝動的な必然性が感じられる。

それが、よくあるシンプルストーリーでしかない定番さを完全に乗り越えており、渋々依頼を受ける原の男っぽい態度と、後ろを振り返らずに衝動的に逃亡しようと前を向く粟島の掛け合いが噛み合っていくほどに、独特の情緒と抒情が深まっていく。

この辺りは城定秀夫の真骨頂の描写だろう。

全体的にはこのシリーズらしく、コミカルな描写と展開の人情アクションコメディという感じだが、「銀河鉄道の夜」を読んで、お伽話みたいな絵空事を夢見たしがないチンピラの、その儚い希望がメロウな情緒として全編に拡がっていく味わいがとても良い。

チンピラ役の粟島瑞丸も好演している。

これも城定秀夫らしい魅力に溢れた秀作の一篇。






2017/01/14(土) 01:14:12 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

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