0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「マッチポイント」




ウッディ・アレン「マッチポイント」再見、

元プロテニス・プレイヤーのジョナサン・リース・マイヤーズは、大金持ちのマシュー・グードと仲良くなり、そのうちマシューの妹のエミリー・モーティマーと結婚する。

だが、マシューの婚約者の、アメリカ人の売れない女優スカーレット・ヨハンソンにジョナサンは徐々に惚れていき、ついには不倫の関係となる。

しかしヨハンソンの執拗な態度が、ジョナサンは次第に疎ましくなっていく。






ウディ・アレンがロンドンをロケして撮ったサスペンスノワール映画。

イギリスの上流社会で、元テニスプレイヤーの男が野心的に地位や財産を手に入れるも、ヨハンソンというファムファタールとの不倫に翻弄されて、ついには犯罪に手を染めてしまう、なんて、もうありきたりこの上ないお話を、ウッディ・アレンのニューヨーク派の悲喜劇的な人間ドラマのタッチで描いている。

だから、犯罪ノワール映画にはありがちなテンプレストーリーでしかないのに、先の展開が読みにくいところがあり、あくまでウッディ・アレン映画的なドラマとしてサスペンスノワールを語っている異色さが際立っている。

ジョナサンの犯行の証拠になる伏線に見えたものが、逆の意味に作用するラストの捻りもわりと巧い。

ジョナサンがいかにも犯罪素人らしい不器用さで犯行を行う描写などにも、妙にウッディ・アレンらしさが出ているし、何より役者陣がありがちな設定のよくある役柄を演じているはずなのに、型通りな芝居の固さや設定に閉じ込められた芝居から解放されているところがいい。

芝居はあくまでいつものウッディ・アレン映画のウイットに富んだ人間的なものなのに、そんな芝居のドラマがそのまんま犯罪サスペンスノワール映画に生成されていく充実感が秀逸である。

まあだから、ハリウッド50年代の犯罪ノワール映画に充満していたような暗いヤバさの気配はやはり薄いのだが、それでも中々異色な、よく出来た秀作と言える一篇。 2016/12/03(土) 01:05:28 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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