0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「呪眼」




吉村典久「呪眼」、

彫刻家として成功しようと古いアパートに引っ越した曽根悠多だが、そのアパートには異様な気配の住人たちが住んでいて、プライバシーや秩序を守ろうとしていた。

その上グシャグシャという不穏な音が聞こえてきて、曽根が偶然みつけた壁の穴からは異様な光景が見えた。




古いアパートを舞台にしたホラー作品。

アパート住人役で、脇を荻野目慶子に伊佐山ひろ子、島田洋八に緋田康人といった異色の名優たちが個性豊かに固めており、中々キャスティングは豪華だが、しかしはっきり言って出鱈目に破綻している作品としか言いようがない。

だからせっかくの名優の演技も宙に浮いてしまい、全く活かせていない。

だいたいアパートでプライバシーを守る、秩序を守るなんてのは当たり前の話だし、今時長屋か下町みたいなアパート住人の交流なんてそうそうないんだから、このアパート住人たちの秩序なんて別に普通に見える。

寧ろ、そんなプライバシーの話や秩序の話を面と向かってイチイチ説明してくれるなんてコミュニケーション豊かな方だろう。

挙句、曽根が夢でうなされていたら、住人が集まってきて、静かにしろと注意してくるなんてどんだけ人情アパートだよと言いたくなる。(苦笑)

曽根の隣は住人から一目置かれている荻野目慶子だが、荻野目はプライバシーや秩序を守れと言いつつ、女の一人暮らしなのに、曽根を部屋に招き、一緒にお茶して、下の名前で呼んでくれと言い出すのだから、ほとんど家族的付き合いのある人情アパートそのものとしか言いようがなく、なんだか辻褄が全く合わない描写の連続である。

まあこれがカフカじみた不条理ホラーだというならわからんでもないが、結局曽根の抱えるトラウマじみた暗黒と彫刻、それと過去の殺戮と血まみれな修羅場のラストと、プライバシーを侵害するなと言うわりにやたらな人情アパートでしかない住人たちの描写の繋がりがさっぱりはっきりしない、ひたすら出鱈目に破綻している作品としか言いようがない。

結局、アパートの話も曽根のトラウマ話も殺戮的修羅場の描写も、どれもこれも中途半端な描写で、せっかくの名優陣の演技もまるで活かせていない、やたらな出来損ない感と出鱈目感ばかりが目立つ一篇。
2016/11/15(火) 02:41:45 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

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