0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「こたつと、みかんと、殺意と、ニャー。」




梶野竜太郎「こたつと、みかんと、殺意と、ニャー。」、

百合系SNSでカリスマ的な人気のHNニャー=木嶋のりこは、彼女に恋愛感情を持つこたつとみかんと一緒に温泉旅行へ行く。

しかしその旅行でこたつとみかんは失踪してしまう。

伝説のOGを慕う者が、そのハンドルネームを受け継いでツヴァイ(二代目)となる、というSNSの伝統から、ひばり=南結衣といづみ=酒井蘭はそれぞれ「こたつ」「みかん」を襲名する。

その後、ニャーと二代目こたつとみかんはまたまた温泉旅行に行くのだが、実はこたつとみかんにはある計略があった。



百合系女子の恋愛をミステリアスに描いた作品。

監督の梶野が芸能事務所パイク・プランニングの社長だからか、自分とこの看板タレントの木嶋のりこのPVのように百合的なシーンを撮ってるように見えるところが随所にあり、謂わば百合系な題材設定のアイドルPV的な印象が強くあるのだが、しかし映画自体は独特の感覚で描かれた、結構芸のある作品になっている。

基本ミステリ的な展開で、こたつとみかんとニャーの関係と、二代目こたつとみかんとニャーのミステリアスな旅行が描かれていくのだが、全編女子同士の笑顔、笑顔、Kissシーンの連続で描きながら、SNSという微かな繋がりの百合系女子たちのマイノリティ的世界の儚い幸福と純愛をちゃんと描いている。

それでいて、やはりミステリ展開だから、絶えず奇妙なサスペンスが持続的に漂っていて、ラストはSNSという弱い繋がりしかない百合系女子のマイノリティ世界の、儚い幸福故のメロウ感が、いきなりのどんでん返しでひっくり返り、中々ブラックなオチで終わっていく。

少しAKB48の渡辺麻友に似ている気がする木嶋のりこが熱演しており、二代目こたつとみかん役の南結衣と酒井蘭も双璧を成す好演を見せ、単にアイドルPV的に撮られているなどとは言い難いものがある。

たぶん他の監督なら、もっと輪郭のはっきりした描き方や、ベタな百合系映画のパターンに嵌めたような描写になったろうに、梶野監督は、SNSの繋がりの弱さや微かさ、またはマイノリティな百合系世界だけの幸福感をかなりダイレクトかつ破片的に表象させながら、それをひっくり返すオチに持っていく秀逸さを見せていて中々に芸がある。

そんな独特の感覚で貫かれた、わりと野心作な一篇。 2016/11/05(土) 00:14:28 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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