0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「湾岸フルスロットル」




池田哲也「湾岸フルスロットル」再見、

水谷百輔は愛車のGT-Rで湾岸道路を疾走していたが、ある日、RX-7=FD 3Sが激走してきて、パワーでは上のはずの水谷のGT-Rは、二世代前のRX-7に負ける。

しかもRX-7のドライバーは、一般車両の巻き込み事故から、凄ざまじいテクニックで水谷を救ってくれていた。

水谷はその後もずっとRX-7のことが気になり、その敗北に対するリベンジの気持ちと、反してまるで車同士で会話してレースをしていたような至上の愉しさが忘れられなかった。

そして、水谷は自らのGT-Rのチューンナップをして、またあのRX-7と勝負したくて湾岸を走り続ける。

だがどれだけ走っても、RX-7はやって来なかった。

その後、水谷はレースをやった時、RX-7の助手席に座っていた女性、ちすんを見かけるが。





GT-R対RX-7の対決と、走り屋同士の車への友愛を描いた映画。

監督・脚本は、「Shall we ダンス?」や「シャブ極道」、三池崇史の「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」、「極道黒社会 RAINY DOG」や、黒沢清の「CURE」「蛇の道」「蜘蛛の瞳」他などなどの、日本映画の重要な作品群のプロデューサーだった池田哲也。

顔を合わせたことのない二人の車愛の強い走り屋の対決と友愛とリスペクト、そしてRX-7と車愛の継承が描かれているが、水谷がチューンナップにより性能をどんどん高めていくことに執着していく描写と、情緒的な人間ドラマがうまくクロスしている。

水谷の精神的成長ドラマや、車を通して語り合う稀有なコミュニケーションというものを、登場人物のそれぞれの事情をクロスして描き、あくまで人間ドラマとしての走り屋映画になっているところは良いし、水谷が自分を追い抜いたRX-7に執着し対抗しながらも、結局、車愛とリスペクトからその継承者となっていく展開も秀逸である。

またRX-7特有のロータリーエンジンに関する解説描写や、その貴重さや特質をドラマの中で語る描写もかなりいい。

しかし、ロータリーエンジンを自ら改良していく水谷のチューンナップ描写や、たむらけんじがシリアスに演じる伝説のチューナーがRX-7をコンピューター処理する描写などがイマイチ大味な描写に過ぎるところが残念である。

ここに醍醐味がないと、ハリウッドのカースタント映画ほどの迫力を、ハナから公道のレースシーンorカーチェイスシーンに望むべくもない、こういう低予算カースタント映画の強みが生きないので、そこが一番残念なところである。

ただ役者陣は、主役の水谷百輔から彼女役の近藤あゆみ、相棒的エンジニアの明楽哲典やシリアス演技が割といいたむけん、水谷の好敵手にして憧れの儚い存在である与座重理久、その恋人ちすん、水谷の仕事場である焼肉ダイニングの上司、烏丸せつこなどなど皆適役で好演している。

今年初頭に水谷は芸能界を引退してしまったし、水谷とのカップル役が感じ良く似合っている、彼女役の清楚な近藤あゆみも近年全く見かけないが、人物たちの人間関係やコミュニケーションの描写がいいので、この二人が消えてしまったことがちょっと寂しくも思える。

最後の終わり方がいかにもパート2に続くって感じの半端な終わり方なのも惜しいところだが、しかしカーメカニックな部分と温もりのある人間ドラマの按配がわりといい、佳作な一篇。






2016/10/15(土) 00:06:20 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

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