0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「おやじ男優Z」




池島ゆたか「おやじ男優Z」再見、

なかみつせいじは、早期退職制度で会社の部長を辞めてスナック経営に乗り出すも失敗し、借金を抱えた上に妻に離婚を言い渡される。

金が無いなかみつは、なんとか慣れないバイトで食いつないでいたが、寝泊まりしているネットカフェでAV男優募集の広告をみつけ応募する。

しかし面接に行くと、ゲイの中年男の相手をさせられ、挙句、AV男優の最下層である汁男優の仕事を紹介される。

そして、AVの撮影現場で知り合った同じ汁男優の年長者・牧村耕次や、竹本泰志と共に、なかみつは「どん底ハウス」なるボロい古民家で共同生活するようになる。

しかしある時、AV界のトップスター女優の坂ノ上朝美になかみつは妙に気に入られ、ファンに私生活を荒らされて辟易していた坂ノ上がどん底ハウスにやって来て、なかみつらと共同生活するようになる。




有末剛の原作と、AV女優の実話を元に映画化された、AV業界の最底辺の中年おやじを描いた作品。

池島ゆたか初の一般映画監督作だが、出演者は最底辺男優どころか、日本のピンク映画男優のトップとしてピンク映画を長年支えてきた、なかみつせいじ、牧村耕次、竹本泰志などをメインに、ピンク映画ではお馴染みの男優、女優である那波隆史や柳東史、樹かず、監督の池島ゆたかや国沢実、佐藤吏、世志男、津田篤や、坂ノ上朝美 、倖田李梨、吉行由実他、ピンク映画のオールスターキャストが脇を締め出演している。

スタッフにも監督の山内大輔や田中康文らが参加している。

いろいろ人生に失敗して、全てを失い、どん底人生をやっているなかみつや、業界の底辺の人間たちをコミカルとペーソスを交えて情緒豊かに描いているのがとても秀逸である。

五代暁子の脚本も、構成がうまくかなり良い。

途中、坂ノ上が3人と共同生活し始めてから、それぞれの人間の哀しい訳あり事情も発覚していき、中々見事なドラマが語られている。

結局なかみつ以外は仲間がいたり、家庭があったりするので、なかみつは底辺の人間の孤独感をさらに募らせ絶望を深めるようになるが、坂ノ上が絶妙になかみつを励まし、温かみのあるほんわかした人間関係が、そこにまた描かれていく。

なかみつせいじだけでなく、坂ノ上朝美も、牧村耕次も竹本泰志もいつも以上の見事な好演を見せ、まるでかっての森崎東の秀作を想起させるほどの映画になっている。

最底辺で辛い状況の中生きている哀しい中年男たちを、温かみのあるコミカルな人情ドラマに、哀愁溢れる群像劇を交えて描いた、なんとも見事な傑作の一篇。 2016/10/08(土) 00:05:32 その他 トラックバック:0 コメント(-)

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://shoheinarumi.blog18.fc2.com/tb.php/1773-f8b9e220