0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 松山善三




先日松山善三氏が亡くなった。

故・高峰秀子さんの夫であり、監督、脚本家として活躍された方だが、主に脚本作に印象深い作品が多かった。

世間では監督作「名もなく貧しく美しく」、「典子は、今」や、「人間の條件」シリーズの脚本などが代表作と言われているが、まずは成瀬巳喜男の脚本家として「乱れる」「女の座」「娘・妻・母」「妻として 女として」「ひき逃げ」などの名脚本を書かれた方だった。

この成瀬作品中でも、成瀬最終作「ひき逃げ」の脚本は、ノワールなまでにシニカルなヒューマンドラマで、これが最高傑作ではないかと思う。

また前にここで書いた、千葉泰樹監督作だが、まるで成瀬作品のようなシニカル・ノワールヒューマン映画だった「二人の息子」の脚本も見事だった。

生真面目な文芸作品の印象が強い人だが、こちらも前にここで評を書いたブラック喜劇「有楽町0番地」や、「アイ・ラブ・ユウ」などのコミカルな作品も良かった。

また「野獣狩り」や「左利きの狙撃者 東京湾」のような刑事アクション映画とヒューマンドラマの合間を行く秀作も書かれていた。

「あなた買います」は新人に多額な契約金を出すプロ野球界をシニカルに描いた秀作だったし、これも前にここで評を書いた「二人だけの砦」も、東映ヤクザものと松竹ホームドラマが合体したようなシニカルなノワール・ブラック喜劇だったし、と、先の「ひき逃げ」もそうだが、よくクローズアップされる感動的なヒューマニズム映画ばかりを単に書かれていた方ではなく、かなりヒューマニズムの裏側のシニカルな暗部に肉薄した作品も、面白おかしく多く書かれていた。

そんな広く深い、多元的な作家性を持った方だったと思う。

松山善三さん、ご冥福をお祈り致します。






2016/09/06(火) 00:06:15 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

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