0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「標的 羊たちの哀しみ」

若松孝二「標的 羊たちの哀しみ」再見、

佐野史郎はサラリーマンだが、毎日変わりばえしない生活を送る内に自分のことを生きる屍だと思うようになっていた。

ある時、姿を消した先輩社員の吉澤健を連れ戻すため、吉澤の故郷の新潟に出張するよう佐野は上司に命令される。

それは毎度のサラリーマンのただの出張のはずだったが、吉澤を捜すうちに怪しい連中に出会うようになり、危害を加えられたことから佐野は吉澤捜しを妨害する連中に牙を剥き出すが。




北方謙三の原作を若松孝二が映像化したB級ハードボイルドVシネマ。

若松作品常連の吉澤健が出て好演している上、脚本には出口出の名前もある。

「その男、凶暴につき」に出ていた川上泳もチョロっと出演している。

ハードボイルド映画も若松が撮ると妙に反権力的に立ち向かう映画テイストが濃厚になるが、まあだいだい元々ハードボイルドというものは一匹狼が権力と戦う活劇話みたいなものだから全く違和感はない。

佐野史郎はこの作品の少し前に冬彦さん役で大ブレイクしているから、普通のサラリーマンがだんだん狂ったように凶暴になっていく役どころは冬彦さん役と似ていると言えなくもない。

しかしながらやはりこちらはあくまでハードボイルドであり、佐野は狂っていくわけではなく、サラリーマン以前に学生サッカーのスターとして輝いていた時代の野性を取り戻して、襲いかかる敵ととことん戦うようになる展開だからやはりあちらとは違う。

まあ佐野史郎が体育会系のサッカースター選手だった、という過去の設定はさすがに似合わないが(苦笑)、それでも怒り出してからハードボイルドに戦う役どころはわりと似合っている。

そもそも佐野は怒りの感情に任せて戦う役どころは巧いので、一見不似合いそうなこういうハードボイルドな役どころもやはり無理なくこなせるのだろう。

不破万作や石橋蓮司が悪役で出てくるが、途中で殺される伊藤洋三郎共々皆好演している。

ただ途中、佐野が自分の過去を回想するモノローグショットと相手役の大沢逸美が独白するショットが反復的かつ交互に映し出されるのだが、反復の度に大沢が徐々に着ている服が減って裸になっていくショット展開はさすがにコントチックで笑わせる。

若松孝二のハードボイルドB級映画、というテイストが中々いい一篇。 2016/05/21(土) 00:05:56 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

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