0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「透明変態人間」




奥渉「透明変態人間」、

金子弘幸はバイト先で遅刻ばかりしており、先輩のめぐりにいつも叱られていた。

めぐりは金子に辛く当たる自分に自己嫌悪になっていたが、だらしない金子を見るとつい叱らざるを得なかった。

だがある日金子はチンピラに殴られていた奇妙な中国人を助ける。

そしてお礼に、瓶入りの薬をもらうが、それは3分間だけ身体が透明になる薬だった。

金子は透明になると、バイト先のめぐりの裸を見るようになる。

だがめぐりが上司との不倫を悩んでいたり、自分に自己嫌悪になったりする度に金子は透明になって見守り、助け、チンピラにめぐりが絡まれたら撃退し、めぐりの不倫相手の上司が他の女とデキていてめぐりをないがしろにすると、上司に透明のまま制裁を加えてめぐりを守っていた。

だがある日、もう一人の透明人間が現れめぐりを誘惑したため、金子はめぐりを守るため、その透明人間と戦うことになる。





透明人間を主役にしたラブコメ映画だが、これはつまりチャップリンの「街の灯」の透明人間バージョンだろう。

「街の灯」は目の見えない少女に浮浪者のチャップリンが優しくし、密かに彼女を守る話だが、こちらは見えない存在の透明人間が、最初は苦手だったが恋するようになる女性を密かに助け、守る話だからである。

しかしシンプルな名作の「街の灯」よりもうちょっと展開もお話も凝っている。

「街の灯」のように目が見えるようになった少女が、みすぼらしい身なりのチャップリンこそが自分を助けてくれた存在だと気がつくまでのお話では終わらず、めぐりの側にちょっとした捻りがあり、最後それが明かされるオチがきて中々いい感じの純愛エロス譚で終わっていく。

めぐりは妙にこういう小さなラブコメ作品でいつも好演しているが、それは自分に自信がない柔らかく揺れ動く女性の役が似合うし、そういう役どころをメロウに演じるのが上手いからだろう。

この人、もうちょっと演技派の女優さんとして評価が高くてもいいのにな、といつも思う。

業の深い、エモーショナルな芝居が上手い強烈タイプの女優ばかりが名女優なのではなく、こういう優柔不断タイプなだけに、弱く揺れ動いて生きている人間の表現が自然な人もいい女優だと思う。

元レディースの青春ものに秀作多しの奥渉作品らしく、バカバカしい漫画設定がいつしかメロウで切実なドラマに変わり、それが捻りを加えた展開によって中々感慨深い終わり方をしており、城定秀夫だけでなく、やはり奥渉もVシネ・メロウラブコメの名手の一人である。

チャップリン作品の珍種バージョンにして、チャップリン作品よりさらに捻りを加えた展開に独特の感慨がある、中々の佳作な一篇。















2016/01/23(土) 02:02:14 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

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