0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「ルパン三世」




北村龍平「ルパン三世」再見、

世界で最も美しいジュエリー、クリムゾン・ハートはかつて盗み出され闇に消えていたが、実は現代において、アジアの闇社会の帝王、Mr.プラムックと、怪盗ルパンの相棒だった老いた盗賊・ドーソンがルビーと首飾りの片方ずつを所持し、お互いのお宝を狙っていた。

インターポールの銭形警部=浅野忠信は情報を得て、老いたドーソンがリーダー引退表明する大盗賊団=ザ・ワークスの次期リーダー発表の集まりを見張るが、中には国際指名手配犯のルパン三世=小栗旬もいた。

他に峰不二子=黒木メイサや、マイケル・リー、ドーソンの用心棒・次元大介=玉山鉄二もいたが、プラムックは、ルパンを敵視するマイケルを利用してドーソンを暗殺させる。

そして首飾りを手に入れ、クリムゾン・ハートを完成させる。

ドーソンの遺志を継ぎ報復の意味合いもかねて、ルパンは次元や石川五右衛門=綾野剛、不二子らと宝石を奪おうと画策する。

しかしクリムゾン・ハートは、地図に載らないジャングルの中の、難攻不落のセキュリティが敷かれた巨大な要塞型金庫・ナヴァロンの箱舟に収蔵されていた。

ルパンは銭形の追跡をかわしつつ、仲間とクリムゾン・ハート強奪計画を進行する。




モンキー・パンチ原作の、長いことアニメ版が作られてきた有名作品の実写版。

かって目黒祐樹がルパンを、伊東四朗が銭形を演じた「ルパン三世 念力珍作戦」という実写版があり、あちらはまあ申し訳程度に実写化しましたって作りだったが、こちらは本格的な実写化映画と言える。

しかし残念ながら、これがあまりの駄作であるため、そう褒められた出来ではない「念力珍作戦」すらそう悪くないようにすら思えてきてしまうほどである。

別にキャストは悪くない。

小栗旬も玉山鉄二も綾野剛も健闘しているし、原作のキャライメージに近ずけようとする演技だってちゃんとしている。

キャスティングが決まった段階からミスキャストを圧倒的に批判されていた峰不二子役の黒木メイサだって、そのミスキャストとしての最大の難点である、不二子のように巨乳ではないという、大きな乳の欠落を抱えながらも、そのあまりにも無い乳を胸に、それなりに雰囲気を出して好演してさえいる。

巨乳が映らない表情のアップだとか遠景ショットでの肢体で勝負しているところもあり、まあやはりミスキャストではあるが、それなりに頑張っている。

しかしこの映画は監督の北村龍平の劣化ぶりが全てを台無しにしている。

公開前は黒木メイサの非巨乳という難点が最大の懸念材料だったが、蓋を開けてみれば最大の戦犯は、公開前はほぼ唯一の安心材料だったはずの監督の北村龍平だということが映画全編に渡って確認出来る。

やたらカッコばかりつけたCMチックなショットの数々、
細かく割ったカットが、アクションをひたすらぎこちなくするばかりの悪循環、
キャライメージに近ずけようと頑張る役者陣の熱演を最悪の退屈さで映し出す演出家としての愚行の数々、
派手な銃撃戦をゲームのバトルシーンにも劣る迫力の無さで撮る拙劣さ、
あれだけ緻密な計算から要塞金庫のセキュリティを破る方策を見つけだしたのに、いざセキュリティを破る描写になると、ルパンとマイケルがケンケンパをやって突破するだけという、すこぶるすぎる脱力描写、
おまけにワイルドさを極端に欠いたカーチェイスシーン、
などなど、もはや挙げだしたらキリがないほど、映画全編に渡って全てがダメとダメとダメの掛け合わせのような駄作となってしまっている。

しかし北村龍平という監督は、インディーズからプロ映画監督デビューした頃、これとは全く正反対の魅力で出てきた監督である。

スタイリッシュな映像で決めながらも、あくまでそれがアクションの最大の美点ではないことを主張しているような生々しいアクション描写、
中途半端にカットを割らず、アクションシーンは出来るだけ生のバトルをそのまま見せ、カットを割る場合は、緊密でスピード感を増幅させるテンションを醸し出し、さらに映画の熱気と緊張感をアップさせる巧みさを武器に出てきた監督のはずだ。

銃撃戦だって、低予算の中どうやって迫力を出すかのアイデアが試行錯誤の中に出ていたし、最大の見せ場に向けてアクション描写を集約していく勘どころだって悪くなかった。

しかしこの映画ではその全てにおいて真逆のダメダメ描写になってしまっている。

なるほど、この映画はこれだけの駄作にも関わらず、興行的には悪くなかった。
元々固定ファンがいる「ルパン三世」の実写版で、役者陣がそれなりに熱演しているから客が入ったってまあ別にそう不思議ではない。

しかしハナからその程度の興行的安定は予測出来たろう。

つまり監督がハナから手抜きをして、それなりにカッコつけた映像でお茶を濁したって興行的には悪くないだろうと予測出来なくもない企画の映画だ。

だからか、北村龍平は四年もかけて製作しながら、およそテキトーに撮ったのか?としか思えないほどの劣化ぶりを見せている。

インディーズの頃や初期は才気に満ちていたのに、金に目が眩んで初心を忘れた堕落監督には大谷健太郎がいるが、北村龍平も見事にそこに仲間入りしている作品である。

ダメとダメとダメがひたすら掛け合わされているだけの、まるで金に目が眩んだ日本の映画監督はどのように劣化してしまうかのドキュメンタリーのような、駄作な一篇。






2016/01/16(土) 00:17:12 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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