0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「歌舞伎町はいすくーる」




軽部進一「歌舞伎町はいすくーる」再見、

不動産で金持ちになった覇稲剣(ハイネケン)=塩谷瞬は、学校に行きたくなり、定時制歌舞伎町高校に通う。

そこで最初に出会ったキャバ嬢の生徒・大島なぎさに一目惚れする。

学校にはゲイボーイや十勝花子のような老女生徒に、いかがわしい城後光義の校長やバーレスクのトップダンサーを学校に内緒でやっている熊切あさ美の女教師など、クセのある人物が集まっていた。

塩谷はある日、9年間植物状態だった乃木太郎が入学してきて仲良くなるが、乃木は日本がゼルダ星人に侵略されると言い出す。





新宿歌舞伎町の定時制高校が舞台の、もとはしまさひでのコミックを映画化した青春喜劇。

途中まで演出が実に古臭いベタ喜劇演出で、まるでVシネマ初期の安いベタコメディかどこぞの軽演劇のわざとらしい喜劇みたいで見るに耐えないところがある。

特に校長役の城後光義は1980年代の漫才ブームの頃にやっていた、ゆーとぴあのギャグを今時分やる古臭さで、熊切あさ美への演出もイチイチわざとらしく見える。

しかし実はこの安くてダサいベタベタな喜劇演出は終盤の夢オチに対する全て伏線であり、全ては夢なのだから、意図的にわざとらしい喜劇演出を露骨にやっているのだろう。

夢オチといっても、そこには切実な事情が絡んでおり、夢オチであることに意味深な深みと意味合いすらあり、意外と感慨深い映画になって終わっていく。

ちょっと前に三角関係で揉めた塩谷や、この映画の撮影後熱愛が報じられ、昨年泥沼破局が話題になった熊切あさ美と片桐愛之助などなど私生活のスキャンダルをまとったキャストが一見目立つが、決してそれだけの映画ではない。

現実と現実逃避としての夢、そこに切実な事情の数々が重なり、大島なぎさが切ないエモーションを出して好演している。

しかし大島なぎさは中々いい女優さんだと思うのだが、昨年芸能界を早々と引退してしまった。

まあ何か個人的な事情があるんだろうが、安っぽくて古臭いベタ喜劇テイストをうまく切ないドラマに変換していく役割をその好演ぶりで見事こなしているだけに、あまりに早すぎる引退が実に惜しい。

千葉真一がハリボテと、そこから飛び出してくる侍役で少し出ているが、単なるゲスト出演という感じである。

見るに耐えない激安ダサダサ喜劇が、終盤切実な青春映画に転換するところに中々の秀逸さがある一篇。



2016/01/05(火) 02:35:55 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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