0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「イニシエーション・ラブ」




堤幸彦「イニシエーション・ラブ」、

就職を控えた理工系の学生はコンパで前田敦子に一目惚れし、前田の方も好意を持ってくれ二人は付き合い始めるが。



乾くるみのミステリの映画化。

原作はただのサプライズエンディングミステリではない超絶な傑作だが、この映画版は、原作は言葉で書かれていない部分にかなり意味深でラディカルな、1980年代の構造的本質まで突き刺している意味合いがあったのに、そこにはまるで無頓着でヌルい残念な映画になってしまっている。

80年代のガジェットにはこだわっているし、軽い恋愛もの的ミスリード描写も映像化用に苦肉の策で変えた部分も悪くないのだが、やはり致命的なのは終盤を原作と変えてしまったことでバラエティー番組の恋愛コント程度のオチみたいになってしまった点である。

わざわざラストで伏線をたどり直す描写を入れても妙にバレバレである。

その意味では描き方一つ間違うだけで成立しない精巧な原作を、よくもまあ無頓着に大味でヌルい映画にしたものだなと思える。

原作者乾くるみ氏の名誉のために言っておくが、この映画を原作読まずに見た方には、原作は全くこんな体たらくではないと声を大にして言いたい残念な一篇。


2015/06/02(火) 00:13:36 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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