0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「バクレツ!みはら帝国の逆襲 世界開放宣言」

三原慧悟「バクレツ!みはら帝国の逆襲 世界開放宣言」、

ある監督志望の奇妙な男は一つの映画を作る。

その映画の中で、ある男はたまたま出くわした女子に惚れ込んでストーカーのように写真を撮っていた。

その女子はあるミュージシャンに入れあげていて、ある真面目なサラリーマンはまともな対応だけをする普通人間で母親に逆らえないでいた。

だが様々な事態の急変により、それぞれの人生に変化が訪れる。




複数の人物の人生を交互かつ連続的に描き、それが微妙に繋がっていく青春喜劇映画。

それによりバラバラに見えた人物の関係が、みはら繋がりで明らかになったり奇妙な接続の仕方をしていくが、展開するほどに人物のキャラから印象、内面やらイメージがどんどん違って見えてくる。

バカかと思ったらかなり深刻な事情を抱え、非情な奴かと思ったらかなり切実なものを抱えていた、というように多角的な見せ方でひっくり返し続ける描き方によって、人間一人の持つ複雑な部分を関係性の中で多角的に浮き彫りにしていく秀逸な作品である。

タッチはかなりバカバカしくマンガチックな喜劇テイストだが、その合間に人々の切実さや情けなさ、悲しい事情や精一杯生きている生き様などが微かに露出してくるところが中々いい。

と同時にネット時代の、多角的評価に絶えず晒される今の時代の人間の生や風潮というものの蛇行と悲しみを風刺的に描いていて、言葉に閉じ込められてしまうネット環境の世界がもたらす弊害からの脱出を訴えて映画は終わっていく。

バカバカしいタッチの中で、映画内映画と現実を繋げて、中々真摯な批評意識を明確に露出させている。

その描き方は園子温の「愛のむきだし」や「紀子の食卓」を想起させないでもないが、かなり独特でもあり、園子温とはまた違った映画になっている個性ある作品とも言える。

バカバカしさの中の鋭敏な批評意識には中島哲也の映画も少し思わせるところもある中々の佳作な一篇。


愛のむきだし [Blu-ray]愛のむきだし [Blu-ray]
(2012/07/06)
西島隆弘、満島ひかり 他

詳細を見る


紀子の食卓 プレミアム・エディション [DVD]紀子の食卓 プレミアム・エディション [DVD]
(2007/02/23)
吹石一恵、つぐみ 他

詳細を見る
2014/04/01(火) 14:09:07 その他 トラックバック:0 コメント(-)

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://shoheinarumi.blog18.fc2.com/tb.php/1500-a7e241e5