0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「瘡蓋譚」

上野遼平「瘡蓋譚」、

ある夫婦は仲が良かったが、夫はある時から妻の身体に怪我して出来た瘡蓋(かさぶた)を気ずかれないように食べるようになる。

だが妻はそのことに気がつき出し寧ろ快感を感じるようになるが、夫の方は罪悪感に苛まれていく。






高校生が撮った異様な夫婦の映画。

お話や設定も面白いがほとんどプロ級の見事な出来で、一応河瀬直美プロデュース作だが、これだけの映画をよく高校生が撮ったなというほどの作品である。

まず夫婦生活の自然な日常の絡みシーンが悪くないが、それ以上に瘡蓋が食べたい夫の倒錯に快感を感じだした妻が、背中の皮を大根おろしみたいなので剥かせて瘡蓋を作るシーンの身体的な痛さがダイレクトに伝わってくるところなどは実に秀逸で、映画の身体のダイレクトな触覚性を痛々しさで伝播してきて見事ですらある。

またこのまま瘡蓋を食べたがる夫と快感を感じる妻がエスカレートして増村保造の「盲獣」みたいになるのかと思いきや、そのことに妻は快感と愛を感じているのに夫は自己嫌悪と罪悪感から妻から離れて、すれ違いだしてしまう。

狂ったように嗚咽し苦しむ夫を見て、夫の倒錯も何も全て受け入れているのにすれ違ってしまう、妻の寂寥と哀しみの表情を捉えたショットには叙情が溢れていて実に感慨深い。

最終的には意外なことにいい感じで終わるが、中々映画の生々しさの核心に触れているところのある作品である。

そんな映画を高校生が撮ってしまったとは何とも驚く秀作な一篇。


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2014/03/18(火) 13:35:49 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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