0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「逃走迷路」

逃走迷路 [DVD]逃走迷路 [DVD]
(2011/02/22)
プリシラ・レイン、ロバート・カミングス 他

詳細を見る


アルフレッド・ヒッチコック「逃走迷路」再見、

カリフォルニアの航空会社で爆破事故が起こるが破壊工作員の犯行が疑われる。

そこの工場で働くロバート・カミングスはガソリン入りの消火器を持っていたため犯人の濡れ衣を着せられる。

カミングスは単身自分に消火器を渡した男を警察に追われながら探す。

途中知り合った女性はカミングスを最初怪しんで警察に通報しようとするが、次第にカミングスの無実を信じるようになり二人で真犯人探しをする。





ヒッチコックのサスペンス映画。

やたらと評判のいい映画だが、こちらもかなりヒッチコック好きではあるものの、どうもこの作品だけはイマイチである。

確かにヒッチコックお得意の巻き込まれ型サスペンス映画だし、ラストの自由の女神での主人公と犯人の攻防のシーンなどは実にヒッチコックらしいカット割りで見事に緊迫したヒッチらしいサスペンスタッチだと思うが、映画全体としてはいつものような深層心理を視覚化しているかのようなヒリヒリした感覚と主人公が窮地に陥ると映画自体に不穏な暗黒と邪悪の影が立ち込めるようなヒッチコック映画特有のヤバさが薄く、なんだかヒッチコックの冒険アクション映画を見ているような長閑さとユルさとテンポの悪さを感じさせる。

「断崖」にしても「白い恐怖」にしても「サイコ」にしたって主人公やそれと関わる女性には暗い異様な影があり、それは「ダイヤルMを廻せ!」のような作品ですらそうだし、「汚名」にだってどこか病的な感覚が映画自体に出ていたのだが、この映画のロバート・カミングスにはあんまり不穏の影がなく、いかにも無実の罪を被った男でしかないし、そこには同じく冒険映画的要素のある「北北西に進路を取れ」ほどの展開の妙や魅惑的でミステリアスなシーンの連続というものもあるように思えない。

そういう意味では設定とラストを除けばあんまりヒッチコックらしい映画とは言い難い作品だと思う。

やはりヒッチコック映画には登場人物の病的な精神の異様さが無意識的に露出し、映画自体にもその異様さが不気味な影として顕われ、それがヒッチコックサスペンスの緊迫と絶妙に絡み合う、というのがベストだと思うので、その意味ではヒッチコック映画としてイマイチな作品だと思う一篇。
2014/03/02(日) 13:50:13 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://shoheinarumi.blog18.fc2.com/tb.php/1487-1d217650