0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「セックスと嘘とビデオテープ」

セックスと嘘とビデオテープ スペシャル・エディション [DVD]セックスと嘘とビデオテープ スペシャル・エディション [DVD]
(2011/01/26)
ジェームズ・スペイダー、アンディ・マクダウェル 他

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スティーブン・ソダーバーグ「セックスと嘘とビデオテープ」再見、

アンディ・マクダウェルは弁護士の夫を持ち裕福な暮らしをしていたが、セックスレスと鬱病に苦しみ精神科に通っていた。

夫はアンディの妹と不倫していた。

ある時アンディは夫の友人で長年放浪している芸術家風のジェイムズ・スペイダーと知り合うが、彼の家には多くの悩みを抱える女性にインタビューしたテープがあり、アンディもスペイダーに悩みを話すようにインタビューを受ける。





スティーブン・ソダーバーグのインディーズ系の長編デビュー作。

この映画で映画賞を受賞しソダーバーグは出世の足がかりを掴んだとも言えるが封切り時に評判を聞いて観に行ってなんとも腑に落ちなかった覚えがある。

裕福に暮らしているのに精神的には不幸なんて設定は確かに当時も今も共感を呼ぶものだろうが、まあインタビューするカウンセラーじみたスペイダーが全く精神科医ではなく、寧ろアンディと同じように過去の傷に苛まれている病人であり、言わば病人が病人の話を聞くという設定はいいものの、なんともどこが傷ついている人間なのか、だいたい自分が傷ついた不幸な人間だと厚かましいほど思い込んでる精神構造の人間がどこが傷つきやすい繊細な人間なのかと思え、その明確な精神性から最後有りがちなハッピーエンドでアンディとスペイダーが結ばれたようなラストとなるのには随分鼻白んだし、ハーネクインロマンスかよと言いたくなったものだ。

だがこの後この手のトラウマや鬱病からの再生絡みの恋愛映画は今日まで隆盛しているのだから、これはその潮流の走りの映画とも言えるだろう。

言わばトラウマ、鬱病再生ドラマとハリウッド型ご都合主義恋愛映画の融合だが、しかしながらそのご都合主義な現実に日々準じているうちに精神がおかしくなっていく傾向があるのに、トラウマだの鬱病を扱った映画がご都合主義で終わるなんて本末転倒じゃないかとも思える。

まあこの映画は錯綜に描かれているが、本当は心理的な映画ではなく、ビデオの無機質映像を通すことで、その反心理性が人を癒やすという意味合いもあるだろうから、このご都合主義的な一つの形にまとまるということも反心理的解決法になるのかもしれぬが、だったら金持ちが無い物ねだりしてないで、セックスレスだし退屈だけどまあ金もあるし貧乏よりはマシか、恵まれてるところにもっと目を向けて生きていこうと思えばいいじゃないかとも思えるし、要するに有閑マダムの贅沢病と自分の過去の恋愛の傷から逃避するように現実逃避してきた、今で言えば引きこもりかニートのスペイダーの、贅沢病と現実逃避の格好の免罪符的接合部=呉越同舟がビデオ映像を媒介としたインタビューってだけじゃないのかと思えないでもないところがある。

それでも一応アンディは自活してスペイダーとくっついたように終わるのだが、何だか程のいいまとまり方をして終わる映画である。

まあそう悪い映画でもないと思うし、別に嫌いな映画でもないのだが、やはり腑に落ちないの一言に尽きるところがあるどうもイマイチな一篇。
2014/01/12(日) 13:52:03 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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