0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「一枚のハガキ」

一枚のハガキ【DVD】一枚のハガキ【DVD】
(2012/02/21)
豊川悦司、大竹しのぶ 他

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新藤兼人「一枚のハガキ」再見、

豊川悦司は戦争末期に召集され、クジを引いて戦地へ行かされるが、そこで戦友の六平直政にハガキを渡される。

それは六平の妻、大竹しのぶに宛てたハガキで、六平は自分は戦死するだろうからもし豊川が生き残ったら妻にハガキを渡してくれと頼む。

その後六平他豊川の戦友は戦死し、豊川は数少ない生き残りとして大竹にハガキを渡そうと訪ねるが。




新藤兼人、98歳の遺作。

遺作とは言え、まあ相当な高齢だし、さぞかしわかりやすいベタな反戦映画ではないかと思って封切り時に観に行ったものだが、しかしながらいい意味で意外な出来になっていた作品である。

ほとんど北野武映画のように省略描写が続き淡々と進んでいくタッチで、しかしそれが一時期流行ったミニマリズム映画とも微妙に違い、明らかに意図的な批評性を伴った反復とズレによって、戦中ー戦後の日常を風刺的かつ批評的に捉えている。

だがそれで押し切るのかと思いきや、途中はそこにコミカルな描写と情感豊かな描写が混じり合ったタッチにもなり、映画の中の人物に対する視点とその描写の距離感がマクロになったりミクロになったりする錯綜性がそう散漫にもならずに意外とまとまっていたりする映画になっていて、これが微妙な独特さだったりする。

最後の最後で新藤兼人がこのような異色の映画を撮ったことも中々出色だが、このマクロな視点とミクロな視点の混在によって描きたいものを全て的確に描き得ているような巧さも感じさせ、中々一筋縄ではいかない映画になっているところが秀逸である。

一見奥行きを欠いている描写なようでドラマ的かつテーマ的には暗喩的かつ換喩的に奥行きが深くあり、それでいてダイレクトな表現も微妙に混在させている異色な佳作である、遺作の一篇。
2014/01/10(金) 13:44:07 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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