0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「東京日和」

東京日和 [DVD]東京日和 [DVD]
(2000/04/19)
竹中直人、中山美穂 他

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竹中直人「東京日和」再見、

カメラマンの竹中直人は妻の中山美穂と暮らしていた。

場合によっては過剰な行動が目立つ中山だったが、そんな妻と竹中は愛し合って暮らしていく。





写真家、荒木経惟と亡くなった妻・荒木陽子のフォトエッセイの映画化。

映画自体の物語的面白さよりも、東京の隠れた裏路地を実に丁寧に映し出しているのが出色な映画である。

この映画は、室内の美術やこうした裏路地がメインの映画ではないかと言いたくなるほど、その辺りがとても独特の叙情を生み出している映画である。

荒木経惟と亡くなった妻の愛情に満ちた生活を感情ベタベタで安っぽく描かず、成瀬巳喜男映画的な東京の下町(裏路地)の情緒で丁寧に描き上げたところはさすが日本映画マニアの竹中直人の筋のよいセンスが出ていて秀逸である。

しかし男女のドラマという点において、竹中は荒木夫妻について並々ならぬ思い入れがあるはずなのに、それがうまくドラマ的な情緒として出ているとは言い難い出来に収まってしまっている。

公開前の映画のメイキングで、撮影現場を荒木経惟が訪ねて来た時、荒木役として主演もしていた竹中は荒木の顔を見るなり涙を我慢出来なくなり嗚咽していたので、相当思い入れが前面に出た映画になるような気がしていたが、しかし出来上がった映画自体はちょっとクールなぐらい映像の叙情や情緒で全てを語ろうとしている映画になっていて、それが良くも悪くもある出来になったなと封切り時に思ったものだった。

たぶん竹中はあまりにも題材に思い入れが強すぎる自分をわかっていて、冷静になろうとわざと引いた感じの映画にしたのかも(なってしまったのかも)しれないが、感傷ベタベタにしなかったのはいいものの、やはりもう少しエモーショナルなものが出た映画にしても良かったと思う。

荒木経惟自体、死んだ妻を想っての写真集を出して、篠山紀信に公私混同した感傷ベタベタの素人写真でありプロの出すものじゃないというような批判を受けていたが、それでもそんな自身の作品を肯定していたくらいなのだから、この映画はとても品のある映画だとは思うが、竹中もあと少しエモーショナルでも良かったと思う。

竹中は当時この映画公開前ぐらいにテレビで主演していたドラマの主題歌「君に星が降る」(竹中作詞・歌、坂本龍一作・編曲)すら、まるで荒木夫妻のことを歌っている曲としか思えないほど思い入れていたのだから、そんな思い入れが映画のエモーショナルとしてもうちょっと出ていても良かったとは思う。

品のいい映画ではあるが、それ故に物足りないところもある一篇。
2013/12/15(日) 13:41:58 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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