0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「首」

 森谷司郎「首」何度目かの再見、

 昭和18年の冬、一人の鉱夫が警察で不審な死に方をする。

 弁護士の正木=小林桂樹は遺族から頼まれ調査するが、警察や検事は死体を見せようとしない。

 小林は拷問死を疑いだし、戦時下の官憲の横暴に怒りをおぼえる。
 
 そのうち脳溢血という死因の診断報告が偽証であることがわかっていく。

 しかし死体はすでに埋葬されており掘り返せなかった。

 そこで東大教授に小林が相談すると、遺体はいらない、死因を調べるには首で十分だと言われる。





 小林桂樹の弁護士が事件に隠れた真実を暴き出すサスペンス映画。

 この映画は脚本も見事だが、森谷司郎のテンポのいいアクションタッチに近い描き方もとてもいい。

 また小林桂樹の弁護士役は実にハマリ役で、最後まで真実を追求する男の役にとても似合っている。

 まず前半の疑惑が生まれてから徐々に事件の真の輪郭が明確になっていくまでのプロセスの描写にミステリー映画的なテンポのいい臨場感と醍醐味がある。

 ここまででも十分面白いのだが、後半は死体の真の死因を調べるには首だけあれば十分と言われて、小林が首を切り取りに行き真相を突き止めるまでの描写にスパイ映画的なサスペンスと緊張感があり、つまりこの映画にはミステリ映画の推理プロセスを緊迫して描いた魅力とスパイ映画的な攻防戦のサスペンス映画の魅力がある。

 それを小林桂樹がぐいぐい引っ張っていくので芯の通った映画として最後まで面白く見られる映画になっている。

 脚本の妙技と演出のテンポの良い簡潔さ、ミステリの醍醐味とスパイアクションの醍醐味とサスペンス、それと小林桂樹の名演が見事にクロスして実に充実した傑作になっている一篇。


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2013/09/06(金) 13:55:59 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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