0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「沈黙の女」

沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇 [DVD]沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇 [DVD]
(2011/06/08)
イザベル・ユペール、サンドリーヌ・ボネール 他

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 クロード・シャブロル「沈黙の女」再見、

 裕福な家の家政婦として雇われているイザベル・ユペールは完璧に仕事をこなし、真面目で善良な態度を取っていて一家の評価は高かったが、実は彼女にはある秘密があり、それを暴かれることを死ぬほど恐れていた。

 そのため何事にも無関心や無表情を装っていたのだった。

 イザベルの唯一の友達は金持ちを憎んでいる女だったが、ある日、一家の善意からイザベルの秘密が発覚してしまう。

 そこから二人の女は一家への激しい敵意と殺意を持ち、破滅へと向かっていく。



 

 ルースレンデルの「ロウフィールド館の惨劇」を映画化した作品。

 先に映像化された作品は主役の家政婦が文盲であることを知られるのを恐れて焦燥にかられる様がサスペンスフルに描かれていたが、シャブロルはそれと比べると心理サスペンス的ねちっこさにあまり重きを置いていないように見える。

 この映画の一番目立つところは、やはり秘密が発覚してから静かに狂っていく女二人のあまりに淡々とした破滅的殺戮の様相であり、そこには抑圧され続けた者の怒りの発散のようなものが色濃く漂っている。

 とは言え、はなから金持ちを憎んでいる女のほうにはあんまり共感出来ず、このブルジョア憎悪はシャブロルの映画にはよく出てくるものであるが、そもそもシャブロル自体血縁者の遺産を手に入れてその金で映画を作れるようになった奴なのに、何がブルジョア批判だよといつも思うので(苦笑)、この点に関しては自己チューな感じが妙にする。

 しかし秘密がばれることを恐れて真面目にやってきたイザベルには、何か人間の文明社会によって疎外者にされてしまっている者の悲しみも感じられる。

 だから最後の殺戮が妙に文明社会全体に対する戦いのようにも見えて、中々独特の秀逸なテロ映画のようになっている。

 こんな不思議なテイストの映画はたぶんシャブロルにしか撮れないのではないだろうか。

 サスペンス映画特有の派手なカットアップもないし、わかりやすい語り口もあるとは言い難いのに、最後に至るまでとても説得力のある映画になっている。

 そんなシャブロル独特の傑作といえる一篇。
2013/08/16(金) 13:49:54 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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