0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「ふたりのベロニカ」

ふたりのベロニカ スタンダード・エディション [DVD]ふたりのベロニカ スタンダード・エディション [DVD]
(2006/11/25)
イレーヌ・ジャコブ、フィリップ・ヴォルテール 他

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クシシュトフ・キエシロフスキ「ふたりのベロニカ」再見、

国籍は違うが、同じ日の同時刻に生まれ、ルックスも名前も才能もそっくりなふたりのベロニカがいた。

ポーランドのベロニカは手を怪我してからピアノの道を諦めたが素晴らしいボイスで歌の道を行くが心臓が高音域の音の響きに耐えられないのだった。

フランスのベロニカは音楽教師をしていたがある時巡業でやってきた人形劇に惹かれ、人形の操り手に心奪われていく。




全篇キエシロフスキらしく映画的繊細さの微妙さで語り継いでいる映画。

だからその分、そう凝った話でもないのに台詞が実に少ないのもあってお話はわかりにくい感じが一見するし、映像の映画的な美しき繊細さに見入っているうちに話がわかりにくくなるところもあるが、それほどまでに各シーンが映画としての繊細美に満ち溢れている。

歌っているイレーヌ・ジャコブの顔に雨粒が落ちてくるシーンは特に際立っていて、その繊細な至福感に中々印象深い映画性を感じさせる。

繊細な女性を繊細に描き切っている映画ではあるが、逆に野太いほどに映画的な魅惑には溢れきっていて、物語も人物も映画自体の表現も微妙で繊細極まるものばかりが絡み合って紡がれている映画が、逆にその繊細さの絡み合いこそが濃厚な映画エキスとなって全体的に映画濃度の濃い作品を成立させている。

美しい映像の連続だが、決して審美的な美しさとかスタイリッシュな映像などというものでは終わっておらず、まあキエシロフスキの映画としてはよくまとまっている方だが、それでもお話以上にこの映画濃度の濃い繊細さの魅惑が顕著に目立つ秀作な一篇。
2013/06/11(火) 13:44:07 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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