0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「さらば夏の光」

 
さらば夏の光 [DVD]さらば夏の光 [DVD]
(2005/11/25)
岡田茉莉子、横内正 他

詳細を見る


 吉田喜重「さらば夏の光」再見、

 1968年の初夏に、横内正はリスボンにて工芸品のバイヤー岡田茉莉子と出会う。

 岡田は仕事のかたわら寺院の案内をし、そのスペインの街中で二人は口論している男女に会う。

 岡田はアメリカ国籍の夫とパリで暮していたが、母と弟を失った岡田にとって長崎というのは、終戦の夏と共に消滅したに等しかった。

 その後岡田は横内から離れるが、横内はその後夫と話している岡田と再会し家に行く。




 ヨーロッパを男女が渡り歩くインテリ男女の恋愛映画。

 全編歩き回るのでヨーロッパを股にかけたロードムービーのような映画である。

 再三インテリ男女が理屈を言い合いながら歩き回るスタイリッシュな映画だが、しかし映画の画面にはスタイリッシュとだけで済ますには惜しい映画としての魅惑と映像センスの素晴らしさが溢れ返っていて、アントニオーニ映画を彷彿とさせる作品ではあるが、吉田喜重独特の映像センスと映画ぶりがよく出ている。

 理屈を言い合いながら歩き回る男女はゴダール映画っぽいが、映像や物語のテーマなどの儚い虚無感はアントニオーニ的であり、と同時に当時の吉田喜重に通底していたテーマという感じがする。

 ヨーロッパを優雅に歩き回るインテリ男女の姿は中々オシャレにすら見えるが、まあそれだけでは済まない映画性やテーマ性がちゃんとあるし、そのスタイリッシュではあるが中々映画的散文性を感じさせる男女の断絶含みの対話表現も独特で、やはり実に野心に満ちた作家性を感じさせる映画である。

 ヨーロッパの街も、映画的かつ吉田喜重的センスで美しく捉えられている中々佳作な一篇。
2013/05/15(水) 13:55:57 その他 トラックバック:0 コメント(-)

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://shoheinarumi.blog18.fc2.com/tb.php/1338-3d4a90a0