0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「オリエント急行殺人事件」

 
オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
(2006/06/29)
アルバート・フィニー、ローレン・バコール 他

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 シドニー・ルメット「オリエント急行殺人事件」再見、

 イスタンブールで事件を解決した私立探偵のエルキュール・ポワロ=アルバート・フィニーは新たな事件のため急遽ロンドンに帰らなくてはならなくなり友人の鉄道会社重役、マーチン・バルサムの好意で、オリエント急行の中に部屋を用意してもらい乗り込むが中には様々な乗客がいた。

 途中食堂車にてリチャード・ウィドマークの実業家に自分を脅迫してくる者がいるので調査してくれとポワロは頼まれるが断る。

 だがその後深夜に一等車に泊まるウィドマークは殺されてしまい、ポワロは殺人捜査をすることになる。

 乗客を一人ずつ呼び出し尋問するポワロだが、そこから徐々に事件の真相を推理していく。






 アガサ・クリスティーの原作を映画化したミステリ映画。

 はっきり言ってミステリ映画としてはそれほど凝ったものではなく、殺人事件が起きてからポワロが乗客を一人づつ尋問し、その後一堂に会した席でポワロが推理を表明すると、動機の解明の段階で容疑者はあっさり犯行を匂わせる顔をし、そのまま真相が明らかになってしまう。

 だから随分とシンプルな構造のミステリ映画なのだが、しかしこの映画はすでに見ていて事件の真相を知ってる状態で再見しても感慨深いものがある。

 それはポワロが事件の真相を解明した後に回想される殺人シーンに奇妙な感銘を受けるからである。

 このシーンには、老いたイングリッド・バーグマンやローレン・バコール、ショーン・コネリーやマイケル・ヨーク、ヴァネッサ・レッドグレーブにジャクリーン・ビセット、アンソニー・パーキンス他などなどといった錚々たる名優がこの映画に出演していることの必然性が如実に感じられるからである。

 その意味でこの映画は無駄に錚々たる名優が出ている豪華キャストの映画ではないと思う。

 数年前に韓国映画の「親切なクムジャさん」を見た時、モロにこの映画を想起した覚えがあるが、あちらには韓国映画らしい血生臭さと過剰なエモーションがその悲しい事情に感じられたが、こちらにはあくまで、まるで騎士道的な報復心の矜持と強烈な悲しさがない交ぜになったものが感じられる。

 特に事件が解決した後のラストの乾杯には、まるであまりにも悲惨な末路を遂げた中世の崩壊した一族の報復を成し遂げた悲しき末裔の歓喜のようなものすら感じられる。

 オリエント急行の室内の美しさや衣装の見事さなどが生きていて中々古色豊かないいムードを醸し出しているところも出色である。

 ミステリ映画としての醍醐味はイマイチだしシンプルすぎる作品だとは思うが、事件の裏に隠れた犯行動機の悲しさを感慨深く描き出しているところは秀逸な一篇。

2013/05/06(月) 13:11:10 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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