0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「怒りの街

 成瀬巳喜男「怒りの街」再見、

 学生の宇野重吉とイケメンの原保美は組んで、金持ちの女から同情を引いて金を巻き上げるスケコマシ詐欺のようなことをやっていた。

 相手の身体までは要求せず貞操は守るというルールはあったが、女たちからかなりの金を絞り取り、それで二人は学費を稼ぎ、原は没落した実家にピアノのバイトが儲かるからと嘘をついて家族の生活費として大金を毎月入れていたが、妹は原のピアノの腕ぐらいで大金が稼げるのはおかしいと疑っていた。

 ある時成金の肉屋の娘をカモにする原だが、その女は宇野の戦友のフィアンセだったため宇野に徐々に罪悪感が生まれていく。

 だが原は金持ちのマダムもカモにするが、このマダムが不良マダムで裏で阿漕な金稼ぎをやっていた。





 成瀬巳喜男が撮った、梅宮辰夫のスケコマシ映画みたいな作品。

 宇野がスケコマシ詐欺の台本を書き、貴公子的とモテモテな原が女を騙して金を絞り取る設定だが、まあ相手の身体を要求しないとこはマシとは言え、女を食い物にして悪びれない原のキャラは梅宮と一緒である。

 だが原はあくまで家族の生活を支えるためにやってるスケコマシ詐欺であり、まあ善玉と悪玉の間のキャラだから、梅宮のスケコマシ映画でいうと、コミカルな内藤誠監督作に近いかもしれない。

 だがドラマ自体はさすがによく出来ていて、宇野が罪悪感を感じ始める姿と、どんどん反対に非情にスケコマシを敢行していく原との間のギャップに残酷な暗黒感が明滅し始め、彼らがいつの間にかとんでもない深みに堕ちていることを匂わせる。

 そしてカモにしているつもりの不良マダムに逆に弄ばれているだけである挿話も入り、ピカレスク感もよく出ている映画である。

 貧乏からスケコマシ詐欺を知的なスポーツと称して正当化するが、徐々に罪悪感が芽生える宇野とさらに悪くなっていく原の間に生まれた溝と亀裂が成瀬映画特有の暗黒感と非情な現実感で描かれていくところが秀逸で、題材はちょっと東映チックな露骨さだが、ちゃんと成瀬巳喜男らしい暗黒映画になっているところが良い秀作な一篇。




成瀬巳喜男の秀作
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加山雄三、司葉子 他

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2013/05/03(金) 13:08:02 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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