0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「天使の誘惑」

 田中康義「天使の誘惑」、

 黛ジュンは飲み屋で働いていたが、ある時客の学生風・石坂浩二と知り合い、大学周辺を歩く。

 石坂は大学生の虚しさを話すが、喧嘩に巻き込まれて逮捕されると実は石坂は偽学生だったことがわかる。

 親元に石坂が帰ってしまい、失恋する黛は、今度は大型スーパーで働きながら金持ちの老婆の犬の世話の仕事をするが、犬の散歩の時に推理作家の卵の石立鉄男と出会い恋をするも、石立の方からプロポーズしてきた。

 しかしスーパーの売り子である正体を黛は知られたくないと思っていたが、黛の部屋から見える石立の部屋にはスーパーの先輩の生田悦子が来ていて、二人がただならぬ関係であることを黛は察知する。
 



 黛ジュンがいろんな男と恋愛していく歌謡恋愛映画。

 劇中、黛は自分の持ち歌を何度も歌い、歌謡映画テイストの強い作品になっている。

 まるでオムニバスのように、黛は石坂浩二、石立鉄男、田中邦衛、年の離れた芦野宏と順番に恋していくが、悉く相手の都合で別れることになる。

 石坂は奇妙な偽学生だし、石立は生田とデキており、田中とはトラクターのような車でデートするが、田中の田舎に帰ってから妙に意味深な挿話が描かれて青春映画っぽく別れることになる。

 不思議なことに映画の中で一番パートが割かれているのが、黛とは年の離れた真面目っぽいフランス帰りの謎めいた中年男役のシャンソン歌手・芦野宏との恋愛の挿話で、芦野が役者にはない真面目な一般人みたいな相貌で黛と絡んでいるので、そこに妙にリアル感がある。

 事業に失敗して自殺寸前のフランスから戻った芦野は、黛と一緒にかっての恋人との思い出の地を辿るのだが、そこにちょっとメロウな展開がある。

 この挿話が一番情緒豊かに描かれていて、全体の展開の妙もそんな情緒豊かな描写も、野村芳太郎の脚本の良さに起因しているように見える。

 最後はわりとさわやかに終わるが、単なる歌謡映画とは言えない意味深さが随所にあるところが良い。

 中山千夏も脇で好演しており、意外と佳作な一篇。


 
天使の誘惑天使の誘惑
(2005/04/20)
黛ジュン

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2013/04/19(金) 14:03:41 松竹 トラックバック:0 コメント(-)

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