0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「天下の快男児」

 長谷和夫「天下の快男児」、

 アメフトをやっている竹脇無我は大学の建築学科を優秀な成績で卒業したが、父の建設会社の設計部長の椅子を蹴り父と喧嘩し、家を飛び出してしまう。

 その頃会社を任されている竹脇の兄は入札において内田良平にそそのかされて不正をするが、父はそのことに怒って死んでしまう。

 後に不正はバレて兄の身代わりに他の社員が捕まるが、そのことで竹脇と兄が揉めると、兄は竹脇の先輩で建設会社社長の倉丘伸太朗のやり方が阿漕なのだ、と言い出す。
 
 倉丘を尊敬する竹脇だったが盗聴すると、実は倉丘は内田と繋がっており、かなり悪党なことをやっていた。

 それに竹脇は真っ向から戦うと倉丘に宣言する。




 

 建設会社の汚職話がメインの青春映画。

 実に不思議な映画である。

 アメフトのさわやかな仲間でもある竹脇と倉丘が社会に出ると対立することになるが、しかしこの倉丘の悪役ぶりが実に変わっている。

 倉丘は終始さわやかな感じなのに、悪辣な手口を考え出すことに関しては、組んでいるヤクザっぽい内田良平すら舌を巻くほどの奴で、そのくせ三津田健に頼まれた設計のコンペでは、「これ以上気持ちの良いコンペもない」と、三津田の息子・田村正和を感動させるほどさわやかな戦いを竹脇とやるのである。(田村はあくまでチョイ役なのに、この映画、たまに田村正和特集の括りで上映されたりする。苦笑)

 倉丘はやっぱりいい奴なのか・・・・??と一瞬思わすが、しかしすぐにその竹脇の設計が勝った工事を実にヤクザな手段で妨害すると言って内田を驚かせ、妹の香山美子や母が倉丘の悪党ぶりを恐れて家を出ても平気でさらなる悪辣なことをさわやかな顔つきで内田に言うのである。

 そのくせ香山や母が竹脇の世話になっていることを平気で受け入れていて、バーの中村晃子に「変な敵同士ね」と言われるとゲラゲラ倉丘は笑っているのである。(苦笑)

一体全体倉丘はどういう滅茶苦茶な奴なのだ・・・??と思っていると、さすがに最後は内田良平がヤクザな悪党役になり、倉丘は改心したように(そうは見えんが 苦笑)竹脇の味方につき、妹香山もこの変な兄を許し、結局内田良平だけがすべて悪い話になって映画はさわやかな青春恋愛映画として終わってしまうのである。(笑)

 しかしこの映画で巻き起こるヤクザな悪辣行為の絵図を描いたのは内田ではなく、全て倉丘なのだ。

 なのに最後は何故か工事現場を爆破したはずの内田だけが死んで、倉丘も竹脇もピンピンしており、何がなんだかはっきりしないうちに結局大した悪党でもない内田良平が全ての悪の罪を背負って爆死した格好になっている。(まあそりゃ確かに最後の陰謀の絵図を描いたのは内田ではあるが、何で内田だけ爆死しているのかが実にわかりにくい描写である)

これじゃあ最後を松竹さわやか青春映画として終わるご都合主義のために、全ての罪を小悪党でしかない内田におっ被せたような終わり方である。(苦笑)

いずれにしても終始さわやかなスポーツマン風キャラのくせに一番悪辣なことばかりやりまくり、そのくせ呆れ返った身内の世話を敵対する竹脇に任せて笑っていて、最後だけいい奴顔するというこの倉丘伸太朗の不思議すぎる悪役ぶりがなんとも目立つ映画である、ちょっと変わった(苦笑)一篇。


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2013/04/16(火) 14:16:30 松竹 トラックバック:0 コメント(-)

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