0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「殴られる男」

殴られる男 [DVD]殴られる男 [DVD]
(2007/01/24)
ハンフリー・ボガート、ロッド・スタイガー 他

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 マーク・ロブソン「殴られる男」、

 ハンフリー・ボガードは新聞でコラムを書いていた有名人だったが、新聞が廃刊になり仕事がなく、ボクシングのプロモーターと八百長ボクシングの興行の仕事をやり始める。

 図体はデカいがボクシングはからっきし弱い外国人の若者をどんどん八百長試合でスターにしていくが、プロモーター側のあまりのピンハネの酷さとボクサーを金づる扱いして人間と思っていない態度にボギーはだんだん嫌気がさしてきて対立し始める。






 ボギーの遺作にして八百長ボクシングの酷さを描いたノワールな裏社会映画。

 プロデューサーのフィリップ・ヨーダンのシナリオが実に秀逸で、金のためならボクサーを人間扱いしない連中の冷酷さをとことん描いているが、マーク・ロブソンはそれを見事に飽きさせぬテンポのいい鋭いタッチで描き上げており、そんな非情なビジネスに片足突っ込んでることに煩悶するボギーも味のある好演を見せている。

 途中のボギーが金で八百長ボクサーを懐柔していく取引の描写も面白く、悪役、ロッド・スタイガーの早口芝居も中々不気味な味わいでいい。

 終盤は八百長を受け付けない真に強いチャンピオン(しかし殺人鬼のような冷血漢)と八百長で勝ってきただけのボクサーが自分の弱さを自覚しつつ血なまぐさいファイトをするシーンが描かれるが、金のために誇りを犠牲にして生きることと、自らの誇りを賭けて戦うことの両方が意味深に描かれ、全体的に深い味わいを感じさせる人生ドラマになっている。

 仕事がなく金のない者たちが、みんな自分を犠牲にして、金のために生きようとし、そうやって何とか生き延びていくことの虚しさと哀愁と非情がテンポのよい活劇タッチの中に如実に感じられる、極めて秀作な一篇。
2013/04/13(土) 02:19:18 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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