0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「帰ってきた狼」

 西村昭五郎「帰ってきた狼」、

 山内賢はかって葉山の海を再開発してレジャー施設にしようとし、既存のものを破壊した小沢栄太郎を刺した男だった。

 葉山では金持ちの娘のジュディオングがわがまま放題の生活を送っていたが、山内はカミナリ族に襲われる彼女とその彼氏を助ける。

 だがジュディはそんな山内を翻弄し、カミナリ族の前で身体を預けたりする。

その話を聞かされたジュディの彼氏は、山内を尊敬していただけに裏切られた気持ちになり、山内がまた狙っている小沢に警戒するように言いに行く。

その後ジュディはまたパーティをカミナリ族に襲われ、強気に出るも、山内はジュディに、この間のことはあなたを弄んだだけだと言われた後だったのもあって、今度はジュディを助けなかった。







 葉山を舞台にしたネオ太陽族映画みたいな、倉本聡が脚本に参加している青春映画。

 資本の論理で開発を進める小沢を海を汚す悪人と思っている山内が、いつも小沢をつけ狙っている設定だが、お話の中心はあくまでジュディ・カップルと山内の三角関係的確執にあり、というかジュディに男どもが振り回される展開である。

 山内は無口で渋い若者なようで、ジュディの色香には簡単に引っかかり、挙句、上から見られて「私の奴隷」みたいにジュディに思われていたりして、結局終始振り回された挙句、大した気持ちもジュディに残してもらえず終わっていく。

 あれだけ山内が必死で守ろうとしたジュディのヨットが燃えようが、そのためにカミナリ族と殴り合おうが、ジュディは数年後新しい船を買うだけの話であって、結局山内の純情や海へのロマンチシズムなど、せいぜい同じように青いところのあるジュディの彼氏が同情してやる程度のことになっている。

 ジュディ・オングが気が強くドSキャラで我儘放題の金持ち娘役を好演しているが、結局この映画はジュディの我儘=現代の虚栄として描いているようにも見えるところがあるし、一番喧嘩が強いのは山内ではなく、ジュディの家のただの使用人のオッサンである高品格であることばかりが描かれて終わってしまう。(だって悪役のカミナリ族は山内など怖がってもいないが、高品が暴れ出すとビビって逃げるし、山内も高品には妙に頭が上がらないのだから。苦笑)

 当時の日活としてはわりとメインテーマな内容なんだろうが、山内のキャラも妙に腰砕けだし、ジュディ・オングは諷刺的に描いているんだろうが主役という感じではなく、イマイチ中心のはっきりしない映画である。

 しかしこの映画は、かって厳然としてあった中心が崩壊し、何もかもバラバラになってしまった不安定な世界の虚妄を描いているところがあるので、映画が多少バラバラした感じになるのも、テーマ自体を映画が体現しているからとも見えるわけで、そういう意味ではリアルな青春社会映画とも言える。

 特に映画の中の不良同志の喧嘩シーンが、かっての日活アクションのようなクライマックスたる輪郭を全く持たず、日常の中のしょーもない喧嘩のように描かれているところなどにそれを感じさせる。

 そういう意味では不思議な感触のある一篇。


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2013/04/12(金) 14:30:26 日活 トラックバック:0 コメント(-)

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