0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「世の中はざらざらしている」

 熊谷まどか「世の中はざらざらしている」、

 渡辺真起子は大型ショッピングセンターのようなところで買い物をしていたが、その時近藤芳正の万引き現場を目撃してしまう。

 警備員の隙を突いて渡辺を捕まえた近藤は、今の行為は誤解だ、黙っていてほしいと金を渡そうとするが、渡辺に逃げられる。

 だが逆に商品を持ったまま外に逃げた渡辺が万引き的扱いになってしまうが、近藤は渡辺の商品の代金を払い車に渡辺を連れ込む。

 万引きしたことや実は教師だった身分がバレた近藤は渡辺を再度口止めするが、渡辺はそれなら代わりに協力してほしいとペットの死体遺棄の協力を近藤に頼む。





 ワンシチュエーションの悲喜劇映画。

 これで完全にうまく描けているとは言えないだろうが、それでも一つの挿話を味わい深く描いている。

 前に書いた「ラジオデイズ」と同じ渡辺と近藤が主演の映画だが、描かれないまでも、このドラマの背景に中学校の教師として生徒の信頼も得られず行き詰まっているのだろう近藤の人生の混乱した心情は伝わってくるし、ペットの死体遺棄にやたら執着し、悲壮感に満ちている渡辺の姿にも、孤独な女の寂寥が十分窺えてわりとよく出来た短編映画になっている。

 前半の関係性がめまぐるしく入れ替わる展開もいいが、しかし後半ちょっと情緒に流れすぎたのかイマイチ展開がまったりしてしまうのが残念で、後半は少々映画が失速してしまうところがある。

 それでもラストは、ペットの死への執着、というより、渡辺自身のあまりの孤独さへの悲しみが、似たように人生に行き詰まっている近藤の存在が横にあることで少し癒されるというかふっきれる終わり方をしており、わりといい味わいで終わっていく。

 もうちょっと膨らませることも出来るようにも思うが、それでも渡辺も近藤も好演している上に、中々映画としての味がよく出ている悪くない佳作な一篇。


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2013/04/02(火) 13:51:16 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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