0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「ラジオデイズ」

 加藤行宏「ラジオデイズ」、

 渡辺真紀子はラジオを聴いて飲食店で踊っていたが、そこへ男たちがやってくる。

 警察に行くことになる渡辺はそこで男に叩かれるが、その様子を近藤芳正の巡査が見ていた。

 近藤は渡辺に近ずき仲良くなるが、徐々に渡辺に気持ちを持たれ追いかけられるようになる。



 


 台詞なしのサイレント映画スタイルによる恋愛喜劇映画。

 音は主にラジオから流れてくるアナウンサーみたいなDJの声と音楽や日常の音だけで、台詞無しで描かれているが、まあ映画をアクションだけで描いているところは評価したいものの、かってのサイレント映画だって字幕で多少の説明なり台詞はあったわけだから、ただラジオの音が流れる中でアクションだけで展開させても、ちょっとわかりにくい上に単調な映画になってしまっているところがある。

 確かにラジオから流れるニュース報道や音楽が映画に映っている状況の説明を匂わせてはいるのだが、その実験的融合がイマイチうまくいっていない。

 映画の作り方や見せ方に斬新な野心は十分感じさせるが、それがうまくいっているかと言うとちょっと疑問な出来である。

 役者陣は近藤芳正も渡辺真紀子も好演しているが、いくらなんでも状況設定が無さすぎるのでイマイチ不明瞭な映画になってしまっている。

 何でも台詞ばかりで説明してしまうと、それが「描写」とはなりにくくなり、ただの「説明」になってしまうので、それを回避して台詞を無くし、ラジオの音のみが状況を感知させるという風にして、あくまで映画の「描写」にこだわっているのはわかる。

 しかしそれが意味があるのは「描写」になることで台詞による説明を超えた多元的な意味や味わいが生まれるからであって、つまり意味をさらに明瞭に開いていくことに意義があるわけだが、幾らなんでもここまで状況設定が不明瞭だと、「描写」自体も不明瞭なばかりで意味を多元的に開いていくどころか伝達していない方向に行ってしまうので、やはり最低限の状況や設定の説明は必要だろう。

 映画としての野心は買うが、それがうまくいっているとはイマイチ言い難い一篇。


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2013/03/30(土) 14:47:47 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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