0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「大阪蛇道」

 石原貴洋「大阪蛇道」、

 三人の子供はいつもつるんでいたが、ある時一人の火事で親を失い自分も顔に酷い火傷をし失語症になってしまった子供が養護施設に入れられ、そこを管理している大宮将司にヤクザに売り飛ばされてしまう。

 25年後、その子供から成人してそのままヤクザになった坂口拓は、敵対組織の人間を抹殺するプロのヒットマンのようなヤクザになっていた。

 その頃同じく成人して子供の頃つるんでいた女子(大人になって田畑智子になっている)と結婚した仁科貴も、しがないチンピラヤクザになっていて、組では読み書きもできないと馬鹿にされ若いチンピラにトイレ掃除をさせられていた。

 だが坂口が殺した相手が関東の大ボスの息子だったため、手打ちにするしかなくなり、坂口は自分で手打ちの金、2億4000万を集めなければならなくなる。

 だが抜かりない坂口はこういう時のために拉致のリストを作っていて、誘拐して得た金で手打ちにするが、そこからさらに凶暴な画策をしていた。




 
 ゆうばりファンタスティック映画祭にて前作「大阪外道」でグランプリを獲った石原監督が、映画祭の助成金を得て作ったノワールアクション映画。


 これまでの「バイオレンスPM」や「大阪外道」と同じく、少年たちのヤンチャな描写から始まり、「バイオレンスPM」のようにその後大人になってからの姿がメインで描かれている。

 展開や見せ方はこれまでで一番凝っているようにも思うが、しかし前2作には「バイオレンスPM」のように、真面目な組織からヤクザ組織に至るまで、組織的なものからはみ出し続ける主人公を色濃く描いた基本線がしっかりあったり、「大阪外道」のように、子供から大人まで誰もが最悪の世界で外道として生きていても、そこには一般庶民とは違う人間の絆や情があることを浮き彫りにしたテーマ性みたいなものが明確に出ていたのに、この映画にもそれがまああると言えばあるものの、ちょっとそこが見えにくい映画になっている。

 口を効かずに人を殺す坂口拓も、父・川谷拓三が得意とした情けないチンピラヤクザ役を余裕で好演しているように見える仁科貴も田畑智子も皆適役で好演しているのだが、坂口の組の抗争も妙に中途半端な描写で終わってしまうし、仁科のダメダメなヤクザの挿話ももうちょっと膨らませてから大人になった坂口と再会するという風でもいいようにも思う。

 そしてこういう設定なら、ジョン・ウーの傑作「ワイルドブリット」のように友情の絆とその残酷な現実が露呈していくのかと思いきや、再会した仁科と坂口の描写も妙にあっさり中途半端な感じで終わってしまい、なんとも大して盛り上がらず終わってしまう感じである。

 関係の錯綜性を描くのはいいが、それによって逆にそれぞれの関係性の挿話の描写が中途半端になってしまい、どうもドラマの核というか中心が不明瞭な映画になってしまった感もある。

 とは言え、どのシーンも魅力的に撮られていて、特に坂口がクラブのトイレで敵対するヤクザを暗殺するシーンを、クラブに向かうところから殺して逃走するまでワンシーン、ワンカットにて臨場感満点で撮っていて、ほとんどマイケル・チミノの再来を思わせるほど、というか、もう映画史に残るべく名シーンなほど見事だったりする。

 ただそれだけに、「バイオレンスPM」でも「大阪外道」でも今時稀有なほどにドラマの核がしっかりした秀作映画になっていたのに、その辺りがちょっと弱いところが惜しい一篇。


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(2011/03/25)
野中耀博、上野央 他

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2013/03/24(日) 14:28:00 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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