0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「立候補」

 藤岡利充「立候補」、

 当選の見込みがほぼない「泡沫候補」と呼ばれる立候補者の中の、特にマック赤坂を追った選挙ドキュメンタリー映画。

 2011年の大阪府知事選挙に立候補したマック赤坂や高橋正明、中村勝、岸田修らの姿を追い、同時に青森の名物立候補者で今は体を悪くしている羽柴秀吉や外山恒一などのインタビューがそこに挿入されている。

 彼らが300万という高い供託金を払ってまでほぼ負けがわかっている選挙に出る姿に迫っている。

 題材はいいし、見ている間中は構成もしっかりして面白い。

 マック赤坂がただ単に浮かれて歌ばかり歌ってるわけでもなく、結構冷静に自分のキャラを見ながらやっている姿も映し出され、周りに笑われているというよりスマイル党総裁と言うだけあって、奇異なパフォーマンスで皆をスマイルにし笑わせようとしているのだろうとも思う。

 しかし結局この映画は長々と映し出したわりには、マックや他の当選可能性ほぼなしなのに立候補する人たちの政治信条も理念も訴えたいこともあんまり語れていない。

 それどころか、何故高い供託金を払ってまで負け戦確実の選挙に出るのかの理由もちゃんと伝えていないし、立候補者に作り手がちゃんと迫っていない。

 唯一、その立候補理由の意味や意義を明確に語っているのは、意外なことに一番有名な泡沫候補である外山恒一だけである。

 外山はそのパフォーマンスとは真逆の冷静さで、日本の選挙というものの無意味をこそ糾弾している意図を明確に語っているのだが、この映画のメインのマック赤坂にも似たような選挙自体が茶番だから自ら茶番を演じる破壊行動を取ってるような傾向は見られるものの、その奇異な街頭パフォーマンスがいかにボロクソにバカにされているかを映すばかりで、どうもイマイチ赤坂の本質なり内実に迫っていない。

 そういう意味ではカメラで長々追ったわりには随分と取材不足な映画な気がする。

 たぶん、負け戦覚悟で周りに罵倒され笑われながら選挙活動をするマックやその他の議員に心情的に同情してしまっているのではないかと思う。

 最後のまとめ方がモロにそうだし、まあそこに負け戦覚悟で戦うことへ擁護の気持ちは出ているのでその辺はわからんでもないのだが、それならそれで、いくら当選するつもりのない泡沫候補と言えども、もうちょっとその思想信条なりににじり寄るか、それがまるでないのに選挙に出ているだけなら、何故思想信条も大してないのに選挙に出るのかをもうちょっとちゃんと取材すべきだろう。

 そういう意味では中心に捉える対象者に対して甘いドキュメンタリーだと思う。

 それで彼らを訳がわからないバカ扱いしている通行人や大衆をちょっと悪役イメージで捉えていたり、個人的には支持しないが橋下徹の維新の会が選挙演説前にマック赤坂が乱入してイチャモンつけてきたので10分ぐらい先に演説してくれていいと時間を譲ってくれて、ブーイングの果てに帰れコールまで浴びた赤坂を無事に帰すよう橋下がちょっと大人な気を利かせたのに、なのに後で橋下を、マックの思想も理解していないくせにテキトーにその場を収めたと証言しているとする批判的なイメージ操作の編集をやるのは、いくらなんでもあまりにアザといマスコミのインチキイメージ操作と同じ編集の仕方をドキュメンタリー映画でやっているに等しいので懐疑的にならざるを得ない。

 そもそも橋下がマックの思想をわかってないと批判したって、この映画自体がまるでマックの思想の根幹を伝えているように見えない。(まあそれが人間にはスマイルが必要だという程度の思想なら多少伝えてはいるが、そのぐらいのことなら橋下だってすでに理解しているだろう。)

 マック赤坂を映画の登場人物としては魅力的に捉えているし、面白い作品であるということは間違いない。(その意味では、個人的には想田和弘の「選挙」より面白いと思う。)

 マック以外の議員の存在にもスポットを当てているところもいいし、マックの運転手の男の家庭の事情を捉えたところもよいと思うが、とは言え肝心なことを明確に取材していないところや、中心の対象者への甘いスタンスにはやはり疑問を感じる一篇。


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  2013/03/23(土) 14:37:44 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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