0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「パンチメン」

 田中健詞「パンチメン」、

 仁科貴は冴えないバツイチの40男で、仕事は出来ず、年下の女上司に怒鳴られまくる毎日だった。

 ある時サンプル商品を持っていく途中、通りすがりのオバちゃんの自転車修理をしていて置いておいたサンプルが車に踏みつけられ壊れてしまう。

 そのことでまた女上司に叱られて海を見ながらたそがれていた仁科だが、やってきた暴走族にカツアゲされる。

 だがそこにいつも会社で会う清掃会社の老人が現れて暴走族と戦い始める。

 結局ノされてしまう老人と仁科だったが、実は老人は水曜の夜にだけリングで戦うパンチメンという格闘技団体に入っており、強くなりたいと思っていた仁科もそこに入っていつの間にかリングに上がって戦うことになる。

 しかし子供のころはある程度デキる子だった仁科はここでも敗戦に次ぐ敗戦を繰り返す。

 そのパンチメンには最強のファイター、大宮将司がいた。




 冴えない40男が格闘技に挑戦する哀愁に満ちた格闘技喜劇映画。

 主演の仁科貴はいよいよ中年となって、父・川谷拓三の再来のような芝居を随所に見せ、まあそりゃ親子とは言え川谷は川谷、仁科は仁科でそれぞれの個性の別の役者かもしれないが、それでもこの映画における仁科の拓ボンっぽさはまるで往時の父が乗り移ったような素晴らしさで、その演技を見ているだけでもとても感慨深いものがある。

 映画自体はミッキー・ロークが大好演した傑作「レスラー」の日本の冴えない中年サラリーマンバージョンのような内容で、それをコテコテの関西喜劇タッチで撮っているが、それが父、川谷拓三が乗り移ったような仁科の芝居の魅力とうまくマッチしている。

 子供の頃は出来る子だったが大人になったら妻子とも別れ、養育費に追われて仕事をしているが、それもうまく行かない仁科の姿を笑いを交えて哀愁っぽく描いており、そこにパンチメンの最強ファイター、大宮将司の過去に残した罪悪感からくる苦しい人生を重ねて描き、最後はこの最強ファイター大宮と、最も弱いまるで勝てない仁科が猛特訓して戦うことになる。

 どちらの男にも辛い問題があり、現実うまくいかないのだが、最強ファイター大宮の方も傑作「大阪外道」での主役の時の好演に続いてこちらでも好演していい味を出しているし、パンチメンの最強ファイターという役に実によく合っている。

 安っぽい戦隊ものみたいなサントラ=テーマ曲も、しょぼい人生をやっている仁科らがそんな中で戦い続けようとする姿に意外なほどにマッチしていて、全体的にかなりコテコテな喜劇タッチで作られているが、最後の仁科と大宮のファイトの後にはダメな奴らの熱い気持ちが溢れ中々感動的なラストとなっている。

 個性溢れるファイターやキャストが他にも多く出てくるところや、笑って泣かす上手さもドラマとして出色な映画だが、しかしやはり仁科貴は仁科貴として一人の個性的な役者ではあるにしても、それでもここには父・川谷拓三の負け犬魂が乗り移っているとしか言いようのない瞬間が溢れていて、それが実に感動的な傑作の一篇。


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2013/03/22(金) 14:07:11 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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