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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「色即是空」

 天野千尋「色即是空」、

 奧野瑛太は税理士を目指して学校に通い資格を取ろうとしていた。

 一方中年女の橋本亜紀は若いカップルに邪険にされていたが、家ではゴロゴロしている夫に見向きもせずサルサ教室のダンスインストラクターに憧れていた。

 ある日奧野は女の先輩に再会し飲みに行くのを誘われついていく。

 橋本はサルサ教室の前まで行くが憧れのインストラクターを前に躊躇して帰ってしまう。



 

 偶然の連鎖が描かれたシチュエーション喜劇映画。

 しかし中々ドラマがよく出来ていて、その偶然の連鎖から生まれる喜劇展開はまるでエルンスト・ルビッチの喜劇映画を彷彿とさせるほどである。

 お経を聞いてる奧野と橋本がどちらも勝手な異性への妄想を膨らますところもよいが、偶然の連鎖から最後実に情けない感じの結末となるところも面白い。

 途中で奧野と橋本の関係が明かされ、そこからシチュエーション喜劇の偶然の連鎖がさらに面白くなっている。

 この橋本と奧野は昨日書いた「煩悩力」でもテロ宗教団の元女教祖とホストの役で共演している。

 奧野の奥手な感じの奴の役どころやその好演、橋本の疲れたパート主婦の感じに味があるので、偶然の連鎖による皮肉なシチュエーション喜劇映画に、単なる喜劇とは言い難い悲劇性も加味されている感じで、その意味では情けなくもやるせない悲劇と喜劇の合体映画とも言える。

 喜劇映画としてはルビッチに近いところがある、先日書いた同じ天野監督の「フィガロの告白」とはまた違ったタイプの中々に秀作な一篇。


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2013/03/17(日) 17:31:16 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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