0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「冬のアルパカ」

 原田裕司「冬のアルパカ」、

 仁後亜由美は雪深い山の中のアルパカ牧場で働いていたが、冬には大雪のために客が来ず、借金だらけになっていた。

 借金取りの若者がやってきてアルパカを売れと言われるが、彼女は売りたくなかったので何とか借金を待ってもらう。

 仁後は仕方なく金のためにデリヘル嬢になるが、デブでブスなため客には悉くチェンジされ客がつかず、警備員の仕事をすることになる。

 そこでバンドをやっている先輩警備員と知り合うが、もらった給料が意外と少ないことを気にしていたら、その先輩が金を持って行ってしまい、パチンコをやって増やすはずが負けて全てスってしまう。



 

 デブでブスな女が孤独にアルパカを守りたいために奮闘する残酷喜劇映画。

 借金のために働き出すとデリヘルやってもブスすぎて客がつかず、警備員やってもロクなことがなく、と悲惨な状況をちょっと間抜けに見せていて、アキ・カウリスマキの映画を彷彿とさせるが、どんどん事態は残酷なまでに暗転していくのにこの間抜けなおかしさが笑えると同時に、逆にその救いようのなさを助長させている。

 悲劇が笑えると、それを「悲劇を真面目にやっていない」などと短絡に解釈されたりもするが、しかし寧ろ悲劇の主人公がそれを見る人に単純に可哀想な人と思ってもらえたら、それはメロドラマのヒロインとして「人の同情を引くのがうまく」いったのであり、そっちの方が「弱者の中の強者」としてまだ救いがある人間だと思う。

 残酷なまでに悲惨なのにやること成すこと笑われてしまう人間の方がよほど悲惨だと思うが、人の同情を引くのがうまい奴を描いた従来のメロドラマの短絡しか受け付けない人にはこれが未だにわからんらしい。(苦笑)

まあこの映画は、結局最後まで暗転しまくったのか、それとも借金取りの兄貴分に怒鳴られて怒っていた若者がアルパカを守ったのか、やはり売ってしまい、それで仁後が最後狂ったように泣いているのかがちょっと不明瞭なまま終わっているが、それでもこの若い借金取りも仁後も救われない連中だなとは思わせる。

 ただ二人が雪景色の中最後抱き合っている姿に、多少の救いというか温かみが出ている感じである。

 仁後が警備員の給料をもらいに行くと、愛想のよかった上司が仁後が判子を忘れたことぐらいのことで急にマジ切れし出す描写などにもリアリテイがあり(それ自体大したことじゃなくても、現場で何度も言ったことを守られないと、こうやって不機嫌になる上司というものは結構いるものなので)、もうちょっと色々出来た感じもする映画ではあるが、悪くない佳作な一篇。


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  2013/03/13(水) 14:01:04 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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