0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「へんげ」

 
へんげ [DVD]へんげ [DVD]
(2012/07/11)
森田亜紀、相澤一成 他

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 大畑創「へんげ」再見、

 ある男は体に変調を来し、妻も後輩の男も心配していた。

 しかし男は単なる病気とは言い難い状態になっていき、その頃街では謎の連続暴行殺人事件が起きていた。

 妻は徐々に夫の正体を知ることになり、夫は人間ならざる怪物になっていた。



 

 サイコホラーとモンスターホラーとノワール映画が合体したような映画。

 前半はよくある怪物ホラーのプロローグといった感じで定番的なのだが、途中から異様なお話に転換していく。

 「大拳銃」と同じく、この映画も展開の面白さとその意味深さで見せる映画になっている。

 途中夫が人間を食い殺すようなモンスターだとわかっても、妻は夫への愛情の方を選択したように夫の殺戮を手伝うようになっていく。

 この人の映画の女性は「大拳銃」でもそうだったが、金のために夫を平気で裏切ったり、モラルも倫理感もなく夫への愛情にのめりこんでしまうようなキャラに一見見えるが、その辺りの描写にはニコラス・レイの「孤独の場所で」の夫婦や、「ハネムーンキラーズ」の現実に存在した鬼畜カップルを想起させる。

 怪物になっていく夫も無意識で人を平気で殺しているサイコじみたキャラがリチャード・フライシャーの「絞殺魔」のトニー・カーティスを思わせるのだが、しかし後半、夫がモンスター化し巨大化してからの展開にはかなり独特な感じがする。

 ほとんど「モスラ」や「キングコング」「大魔神」にあったようなモンスターと愛する女との間にあった、正義の愛とヒューマニズムが、まるで正反対(なような)世界破壊と、追い詰められたものの愛念の爆発に繋がっていくからである。

 そして結局妻はモンスターと化した夫への愛情に単に溺れていたから夫の側についていたのではなく、「人間以外の世界の総意」の塊であるモンスターと化した夫と共同戦線を張っているのであり、最終的には「人間以外の世界の総意」による破壊の総元締めはこの妻なのではないか・・・というものを匂わせて映画は世界破壊の途中で終わっていく。

 つまり妻の世界破壊への欲望=「人間以外の世界の総意」が全ての殺戮、破壊行動の根本にあるのではないかと思わせ、その点ではこれはファムファタールをヒロインにしたノワール映画の闇をモンスターホラー映画でさらに大増幅した映画ですらあると思う。

 この映画もやはり展開の面白さが一番際立っていて、やはりハリウッドからお声がかかってもおかしくない面白さである。(勿論ハリウッドなど別にそう偉いわけでもなんでもなく、ハリウッド映画には愚作も多々あるわけだが(苦笑)それでもさらに大きな映画が世界的に撮れそうだという意味で。少なくともスプラッタシーンはもっと派手にやれそうだし)

 特に後半の展開の感じは「ダークナイト」や「ダークナイト ライジング」のクリストファー・ノーランだって想起させるほどである。

 もう話が来ているかもしれないが、大畑監督には是非中田秀夫、清水崇に続いてハリウッド映画にて世界映画デビューしてほしいなとは思う。

 前半はちょっと定番でユルい感じだが、それでも十分クライマックスに向けて巧く構成されている佳作な一篇。
2013/03/09(土) 14:03:50 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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