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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「裸の修道女」

 田代 尚也「裸の修道女」、

 吉瀬リナと青山真希はレズっていたが、途中で吉瀬が青山の臓物を引きずり出す。

 その後シスター姿の吉瀬は、自主映画でホラーを撮っている元氣安を十字架に架けて拷問し、汚れた映画を撮っている人間として罰を与えていた。

 その合間に、これまでの元氣安の自主映画作家としての辛く苦しい日々が回想的に挿入されていく。
 
 いよいよ吉瀬に止めを刺されそうになる元氣安だったが・・・。



 

 安っぽい自主映画ホラーのようで、その実、切実な青春映画。

 この監督の映画は数本これまで見たことがあるが、どうにもショボイ出来のものも正直あった。

 しかしこの映画は、条件が悪い中、客に無視されるインディーズで映画を撮り続け、おまけにホラースプラッタ系だと映画賞からも無視されるためうまく進展出来ず、周りが映画に見切りをつけていく現実の中で、それでも映画を撮り続けていこうとする元氣安(たぶん田代監督の分身的投影かも)の回想が、AV並みのエロシーンや、ちょっと安いスプラッタシーンの合間に挿入されることで、多少テイストは違うがアベル・フェラーラの映画のような感じを醸し出している。(十字架にかけられるというキリスト的暗喩の意味でも)

 この吉瀬に十字架に架けられ拷問されるというのは、窮地に立っている映画監督の内面の葛藤の暗喩のようにも見えるが、そのシーンをちゃんとエログロとして撮ることを忘れていないところにちょっとした意地を感じさせる。

 吉瀬に拷問されても、自分の撮っているホラーは悪くないと最後まで主張し続ける元氣安は、いよいよ止めを刺されたようになるが・・・・・。
 
しかし最後に、これまでのエログロな拷問描写と自主映画作家の苦痛の回想を交互に描いてきたことを伏線としたような、ちょっと感動的なオチが待っていて、これが中々秀逸だったりする。

 このラストによって、一見安っぽいエログロホラー映画が堂々たる青春映画にちゃんと成り得ているところがある。

 正直この映画を観て、映画作るのをもうやめようと思っていたけど「自分には映画しかない!」と思い直し、腹を括ってまた映画に邁進し出す映画人がいたっておかしくないと思えるほど出色である。

 そんな一本筋が通っている佳作な一篇。


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2013/02/23(土) 13:58:57 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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