0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「東京のえくぼ」

東京のえくぼ [DVD]東京のえくぼ [DVD]
(2005/09/22)
上原謙、丹阿弥谷津子 他

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 松林宗恵「東京のえくぼ」、

 上原謙はバスに乗っていて 丹阿弥谷津子の足を踏むが、その後彼女の財布がスられたことがわかり、警官の小林桂樹らに乗客は皆身体検査を受けるが、スリが上原のポケットに財布を隠したため、上原にスリの容疑がかけられる。

 その頃紀伊国屋物産では社長が失踪してしまったために困っていたが、その社長こそ上原であった。

 上原は書類にメクラ判ばかり押させられ、冠婚葬祭やパーテイに出席しては人の書いた原稿を読むだけの仕事にうんざりして失踪したのだが、その後会社に戻るも、また丹阿弥谷津子の助けを借りて雲隠れし、彼女の家に正体を隠して住むようになる。

 そこでは上原の会社の小会社の缶詰め工場で働いている柳家金語桜がいてよくしてくれた。



 

 社長が失踪して恋愛するラブコメ的な喜劇映画で、松林宗恵のデビュー作。

 意外と悪役っぽい存在は出てこず、金に汚そうな古川六波の会社幹部も結局そう悪い人ではなく、失踪中に社会に出て上原が苦労するという展開でも別になく、終始楽しい描写が続く映画である。

 上原はメクラ判ばかり押して冠婚葬祭などの行事で人の原稿を読むだけなのがつまらないから失踪するが、しかしそれならメクラ判など押さずに毎回よく吟味して判子を押せばいいし、人の原稿ではなく、心を込めた祝辞やお悔やみの言葉の原稿を自ら書いて読み上げればいいじゃないかと思うが、そういう発想はこの上原にはまるでない。

最終的には、上原の正体を知らない金語桜に、会社の社員を信用してないから社長も信用に足る人物にならないのだと上原が暗に言われて、自分が判子を押す決済をしないために関連会社が迷惑していることに気がついて会社に帰るのだが、しかし多少の猜疑心も持たないお家柄社長のことをバカ社長とか世間知らずのボンボン社長と呼ぶのだから、この解決にそう納得のいくものがあるようにも見えない。

 社長には社長の仕事がちゃんとあるし、一見無意味に思えても組織社会の長がしっかりしなかったらどうにもならん、ということは金語桜と一緒に自分の会社の子会社の工場で働いて上原は少しわかったろうが、それでもどうも明確な感じはしない。

 丹阿弥谷津子が下町の娘にしては品が良すぎるようにも見えるが、この方は老いてお婆さんの役をやるようになってもその品格を保ったままである。

 喜劇映画としてはわりと面白く出来ていて、松林宗恵がデビュー作からしてキチンとした喜劇を撮っているなとは思わす一篇。



2013/02/17(日) 13:40:17 新東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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