0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「新ヤンママトラッカー~涙街道・爆走かぐや姫」

 
新ヤンママトラッカー~涙街道・爆走かぐや姫 [DVD]新ヤンママトラッカー~涙街道・爆走かぐや姫 [DVD]
(2003/12/25)
坂上香織.小松みゆき.曽根英樹

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 光石冨士朗「新ヤンママトラッカー~涙街道・爆走かぐや姫」 再見、

 坂上香織はヤンママトラッカーとして伝説の流れ星と並ぶトラッカーになろうとしていたが、ある時14歳になりグレまくる娘を病院に連れて行った時、自分が不治の病に冒されていることを知る。

 坂上は自分が死んでから残される娘のためにトラッカーを辞め、男と結婚し、娘を義理の娘にしてもらおうとするが、母のいない男の息子にも懐かれていた。

 だが娘は坂上に反抗しまくって警察沙汰を何度も起こし、それを坂上の後輩の曽根英樹がいつも心配していた。

 ある日坂上のライバル的な女・トラッカー、小松みゆきが体調悪くトラックも売りに出そうとしていた坂上に代わって流れ星の伝説に挑み峠超えしようとするが失敗し、怪我をしてしまう。




 

 新ヤンママトラッカーシリーズの最終作。

 光石冨士朗の名作「ヤンママ愚連隊」シリーズに続く、こちらも名作シリーズの最終作らしく、坂上は自身の死期が近いことを知ってからトラッカーを辞め、残される娘のことばかりを考えるようになる。

 娘を男と結婚して預けようとする坂上だが、相手の男の子供に懐かれるも、しかし坂上がこの子の母になってやることはできない現実=運命にあることはわかっているので、何とも寂しい哀愁が瞬間的な小さな幸福の中に明滅している。

 Vシネマではあるが、昨今のDV撮りの劇場公開映画などより遥かに映画的な作品になっており、その描写にはまるで相米慎二映画のような映画的描写もあり(たとえば大量の白いシーツが干されている病院の屋上における、坂上と小松の会話シーンの、風に靡く白いシーツの使い方など)、実に映画としての豊かさすら感じられる、このシリーズらしいメロウな哀愁に満ちた最終作である。

 死をめぐる主題は確かにこのシリーズでは何度も語られているが、しかしヒロインの死期が近い状況でのドラマなのもあって、さらに人情味溢れる作風が深まり、娘と母のキレイ事抜きの身体でぶつかり合う葛藤に、坂上の娘を思う、言葉とは裏腹な愛情が悲しく露出している。

 妙にベタな泣きのドラマにもせず、それどころか映画としての品格を今の劇場公開映画作品以上にキッチリ守りきりながらも、哀愁に満ちたメロウな作品として見事な完結を迎えている、光石の作家性も十分出ている上になんとも素晴らしき秀作である最終作の一篇。
2013/02/13(水) 13:57:59 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

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