0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「天使のたまご」

 
TOKUMA Anime Collection『天使のたまご』 [DVD]TOKUMA Anime Collection『天使のたまご』 [DVD]
(2007/01/26)
根津甚八、兵藤まこ 他

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 押井守「天使のたまご」再見、

 少女は荒廃した土地をさ迷い歩き、大きな卵のようなものを抱えている。

 多くの戦士たちは幻影のように空を泳ぐ巨大な魚を攻撃し続けるが、少女は魚などいないと言い、男は自分も含めてただの過去の記憶に過ぎないのではないかと呟く。

 だが少女は男が妄想のように想う鳥が実際にいたことを示すような巨大な鳥の化石を見せる。


 

 

 押井守のシュール極まるアニメ作品。

 あまりにシュールすぎて「わけのわからない作品」というレッテルを貼られ、押井はこの後「機動警察パトレイバー」まで仕事を干されることになったのだから、まるで鈴木清順で言えば日活をクビになるきっかけとなった怪作「殺しの烙印」に匹敵するような作品である。

 しかし後の「攻殻機動隊」や「イノセント」は、モロにこの作品の作風をそのまま引き継いだような感じなので、そういう意味では押井守の核にあるような作品とも言える。

 最初にノアの方舟が陸地を発見出来なかったもう1つの世界にて、巨大な眼球をつけた多くの人型の像が座っている機械仕掛けの太陽が海に沈んでいるらしいが、最後にそれが海から昇ってくるのはわかるが、最初はちょっとわかりにくいかもしれない。

 それによって世界は夜を迎え、方舟の中の動物が化石になってしまっているらしいが、明確な描写はない。

  旧約聖書創世記に出てくるノアの方舟の挿話を押井流に解釈し直したようなお話らしいが、この「方舟」という主題も後の押井作品に出てくるので、その点でもこの作品に押井守のコアな部分が詰まっているように思う。

 最初台詞がまるでなく無声映画のようだったりはするが、お話がそうわかりにくいわけでもないし、最後に男に卵を割られた少女が自ら鳥になったように海中に飛び込み、そこから多くの卵を口から水上に吐き出しているのだが、最後は機械仕掛けの太陽のようなものが海上に姿を見せるので夜の時代が終わったということなのだろうか。

 その割には暗い終わり方で、まるで夜が終わって世界も終わったような終わり方だが、そこに至るまでのアンダー・グラウンドワールドの描写は天野喜孝という相棒とのハイブリットによってかなり独特の世界を実現している。

 どのシーンにもスペクタクルのようなものがあるし、思えば自分たちが過去の記憶にすぎず、あらゆる動物が化石化しているような世界を明確に描く・・・というのも欺瞞に満ちたおかしな話であり、押井としてはそういう異様な世界に相応しい映像世界を作り上げたという感じではなかろうか。

 後の、特に「イノセント」の世界を彷彿とさせる中々異様な一篇。


2013/02/09(土) 14:26:37 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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