0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「二人の息子」

 千葉泰樹「二人の息子」、

 藤原釜足は元学校の校長で今は裁判所に嘱託として勤めていたが、教育論を戦わせて揉め裁判所を辞めてしまう。

 そのことで生活に困り出すが、息子の宝田明はバー勤めだった白川由美と結婚したことをかって藤原に反対され勘当同然で家を出ており、ほとんど交流のない関係だったため、急に金の無心をしてくる父に冷たく接する。

 妻の白川も悪く言われ続けて苦労してきた身なので協力的にはなれなかった。

 そこで弟の加山雄三はタクシー会社を辞めて父母を食わせるために白タクをやって働き出す。

 宝田は同じ会社に勤める妹・藤山陽子がエレベーターガールで終わりたくないと思ってタイプを習っていることを知って妹に気のある部長の小泉博の秘書にしようと画策し、藤山は秘書に抜擢されるが、その頃から生活が派手になっていき、ボイラーマンの恋人に冷たくするようになる。

 そんな折、加山が事故で怪我をし車を失っただけでなく、多額の弁償金まで必要な事態となってしまう。




 

 松山善三の脚本が光る、まるで成瀬巳喜男映画のようなノワール的な家族の葛藤の映画。

 成瀬と比べると千葉泰樹はもうちょっと露骨にドラマの輪郭をハッキリ、がっしり描いているが、それが映画によく合っていると思う。

 家族の中で父が金に困り出した途端、誰もうまくいっているわけではない上、過去に様々な確執を残した関係でもあるのでどんどん家族はギクシャクし始め、誰もが父や家族のために献身しようと動くもそれが悉く裏目に出て暗転に次ぐ暗転を繰り返す映画である。

 加山は与太者的に思われていた次男だが、白タクを始めて重労働をして父母の生活の面倒を見るが結局報われることなく悲惨な目に遭ってしまう。

 加山がまるで若大将の時とは正反対の、何をやってもうまくいかないノワール映画の登場人物のような役をやっていて、女にも下層の人間だからかあまりモテない役どころを好演している。

 宝田の兄は家族の中では一番悪役的に描かれるが、父母への気持ちがないわけではなく、妻の白川由美もこれまでの仕打ちからしたら当然の怒りを表明してはいるがそう悪い人間ではない。

 妹の藤山陽子も出世と女の華やかな幸福を夢見始めてから人生が狂ってしまい、最後はまさにノワール映画的な悲惨な最期を遂げる。

 最後の最後まで暗転と不穏さが漂い続けながらも、なんとかほんの小さなハッピーエンドで終わっているが、父の藤原も過去の校長先生らしい公明正大な態度がいかに人を傷つけていたかを思い知ることになり、終いには「世間知らずのバカ正直」と息子の宝田になじられ自殺未遂にまで追い込まれるが、最後は皮肉なことに自分と似たような境遇の老人の仕事を奪って職を得る。

 この最後の藤原の行動は現実的ではあるが、仕事を奪われた老人が藤原と同じ苦しみを今後味わうだろうことを十分映画は匂わせている。

 見事な脚本と明確な演出、伊福部昭の重量感ある悲愴な音楽と、それぞれの役者陣の好演が見事に連動している傑作な一篇。



松山善三脚本
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千葉泰樹作品
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2013/02/02(土) 14:02:11 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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