0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 大島渚

 
あの頃映画 日本の夜と霧 [DVD]あの頃映画 日本の夜と霧 [DVD]
(2012/12/21)
桑野みゆき、津川雅彦 他

詳細を見る


 大島渚監督が亡くなった。

「御法度」の頃から体調が心配されていたが、それから妻・小山明子さんやご家族の献身もあってわりと長いこと生きられたなという感慨もある。

 その後は何度かリハビリをされている映像は見たものの、ついにこの日が来たかという感じである。

 やはり松竹ヌーベルヴァーグの監督、昔の「朝まで生テレビ」の論客の印象が一番強いが、創造社時代やATGと関わっていた「夏の妹」ぐらいまでの時代や、海外に開かれていったその後にも傑作、野心作が多くある。

 結局一番好きなのは「日本の夜と霧」と「愛の亡霊」ということになる。

「日本の夜と霧」は責任なすりつけあい映画だと初めて見た時は思ったが、しかし世間で内ゲバの一言でかたずけられてしまうことの内実をミステリタッチで描き出した撮影スタイルやその臨場感、生々しい内容はやはり秀逸なもので、たまに大島氏が怒って吠えている顔を見たりするといつもこの映画を思い出していた覚えがある。

「愛の亡霊」はお話自体は奇妙な幽霊譚と昔の犯罪実話の融合のようなものだが、しかし映画としての魅惑は大島作品中でも最高峰なものだと思うし、こんなシンプルなお話をここまでの強度と深みと映画としての魅力満点で描き上げてしまう監督もそうそういまいと思い、見直す度に思わず敬服してしまう映画である。

 その他本物のやたら巨乳なフーテン娘・桜井啓子(ファン)を主役に起用した「無理心中 日本の夏」、
 当たり屋家族の少年、阿部哲夫の無表情が生々しい「少年」、
 皮肉なブラック喜劇のような「絞死刑」、
 ヒリヒリするような「青春残酷物語」や「太陽の墓場」、
 「白昼の通り魔」や「日本春歌考」、ハプニングやドキュメント的なものを実験的に含んだ野心作「新宿泥棒日記」や武満徹のサントラも好きな「夏の妹」、
 当時は韓国で撮影などできない時代だったので韓国の子供たちの写真と韓国少年の言葉を組み合わせて作った「ユンボキの日記」や、その方法論を援用して無謀な挑戦を成功させてしまった「忍者武芸帳」、
 長年ラブコールを送ってきた賀来敦子を出演させATG10周年記念映画として通常ATG予算の倍である2千万円で製作され、カンヌ出品時にはいかにも儀式的な映連と揉めた皮肉ないわくまでついた「儀式」や、
 ワイセツ裁判にまで発展した(結果は大島の無罪)「愛のコリーダ」などなど、やはり社会に対し野心的で生々しき真剣勝負、真剣な実験作やラディカルな思考やタブーをぶち破る姿勢をダイレクトにぶつけていく作品が多かった。

 また脚本作にも、前にここでも書いた意味深な問題作「月見草」や、実相寺昭雄と組んだ「宵闇せまれば」などの出色な作品があった。

 なんというか、色んな意味で革命的な、というか映画を撮ることが毎回革命であるようなデカさを感じさせる映画監督だった気がする。

 その大島監督の革命精神はやはり映画の今の作り手に受け継がれていかなければならないものだろうと思う。

 大島渚さん、ご冥福をお祈り致します。


愛の亡霊 [DVD]愛の亡霊 [DVD]
(2000/10/18)
田村高廣

詳細を見る
2013/01/16(水) 04:28:45 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://shoheinarumi.blog18.fc2.com/tb.php/1222-61d862df