0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「女優と詩人」

 成瀬巳喜男「女優と詩人」再見、

 売れない作家の夫は女優の妻に食わせてもらい、普段は主夫として生活していた。

 近所の中年夫婦は引っ越してきた若夫婦に保険に入ってもらい、売れない作家は同じく売れない同業者の藤原釜足を居候させることになる。

 だが妻はこの居候話に難色を示し、それで夫婦は喧嘩になる。




 中野實の原作を映画化した作品。

 これは前に書いた「月と接吻」と同原作の映画化で、もちろんこちらの方が古い映画化だが、しかし映画自体の出来は意外にもこの成瀬作品より「月と接吻」の方が上に見える。

 勿論、こちらには成瀬らしい端正なシーン作りがあるとは言え、映画史的に見れば小田基義と成瀬巳喜男では雲泥の差があるだろうし、小田など作家としてはほとんど歯牙にもかけらないほど無視されている傾向にあるのだが(しかし「透明人間」他野心的傑作はある)、しかしあちらは主演が三木のり平であることも助けてかそう悪くない出来だったりする。

 まあ一つにはこの手の題材がそう得意とも思えない成瀬と、ユルイ喜劇映画の専門監督のような小田ではやはりこの手の題材を得意とする監督の作の方がこなれて見られるというのもあるだろう。

 それに後から作っている方が先に作られた作品の物足りない点を補強出来るという優位点もあるわけだから、そう不思議ではないことなのかもしれない。

 多少設定や挿話が変わっているところもあるが、小田作品の方が喜劇としてさらに膨らまして描いているところがあるので、こちらはいくら成瀬作品とは言え、初期のシンプルな映画化作とも言える。

 そういう意味では成瀬作品の中でそう特にいい出来の映画というわけでもないが、それでもそれなりに楽しく見れてしまわないこともない一篇。


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2013/01/13(日) 13:54:38 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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