0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「はたらく一家」

 成瀬巳喜男「はたらく一家」再見、

 ある家族は父親の稼ぎだけでは暮して行けず、子供たちも働いていた。

 だが長男はあまりに不安定な自分の仕事と家庭の今後を考えて、一度家を出てちゃんと安定して食っていける仕事に就こうと思う。

 しかし今長男に家を出て行かれると家族の生活が崩壊しかねないため、父母は息子の決断に躊躇する。



 

 貧しい時代の困窮する一家を描いた成瀬巳喜男作品。

 息子が自活して自分で生きていけるようにする、というのは今なら誰もが大いに応援する話だろうが、長男に出て行かれると生活できなくなり、家族や弟たちが困ることになるという現実もあるので、そう長男のやる気を汲んでもやれない・・・という父母の苦境を描いている。

 苦境なのは長男の方も同じで、何も金儲けがしたいわけでなく、引いては自分の父母や弟たち家族が不安定な現状から抜け出し安定した生活ができるようにするために外に出て働くと言ってるのだから寧ろ親孝行息子の言ってることなのだが、しかしその前に今の貧乏な現状が大きく壁として立ち塞がっているという現実が描かれている。

 成瀬らしい皮肉な状況設定の中での家族の姿が描かれているが、最後は兄の今後に結論は出ていないものの、兄弟たちが何とか貧乏に打ち勝つためのやる気を表現して映画は終わっていく。

 多少コミカルに描かれてはいるが、それでもドラマの真意と苦しい現状はよく伝わってくる映画である。

 長閑な中に絶えず現実というものの非情さが感じられるところも成瀬映画らしい一篇。


 
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2013/01/12(土) 14:01:31 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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